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残像のををたのレビュー・感想・評価

残像(2016年製作の映画)
4.3
1950年代、社会主義体制のポーランドによって一人の芸術家が弾圧されていく。主人公の描く絵は抽象的な純粋絵画だが、国家にとってそれは不必要なものとして、政府は彼を、ひいては芸術そのものを追い詰めていく。

芸術は国家の為にあるという考えは、国民は国家のためにあるという考えにも繋がる。
徹底的に芸術家の権利を剥奪されても、彼は決してそこに屈服しなかった。しかし、彼が国家の求める「芸術」に屈服したとて、誰が責めることができるだろうか?
職を奪われ、配給切符を奪われ、絵筆を奪われ、最後には衰弱していく。ただ彼が自由を訴えただけで、その生きる意義すら脅かされる時代だったのだ。

彼は実在の人物で、現ポーランドでは旧体制に抗った画家としてある美術学校にも彼の名前がつけられている。
当時からしてみれば、この自由を訴えた画家は「新時代にそぐわない」異質で排除すべき対象だったが、真の新時代にとって全体主義国家こそが本来時代の流れの中で消えてしまうものだったのかもしれない。
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