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ヘレディタリー/継承のYNのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.7
ホラー映画の歴史に新たな1ページが刻まれた。

これは従来のホラーとは明らかに違う。だけれども、ジャンルわけをするなら、やっぱりホラー映画だと思う。

心霊描写は本当にかすかで、ほのかで、さりげない。
いわゆる「くるぞくるぞ」演出もあまりない。
では何があるのか。徹底的な「厭さ」だ。

心の厭さ、家族の厭さ、実際には体験したことがないはずなのに、「確実にこの手触りを知っている」と感じるような、異常にリアルな厭なシーンのオンパレード。
登場人物の心理描写がマジでえげつないのだ。
「登場人物同士の会話」を創作しようとしたらそうはならないだろ、というセリフ、行動が描かれていて、それは展開のための脚本ではなく「この人物の内面に深く潜り込んで一人称で追体験して」書いたからこそなのだと思わされる。
正直その能力も怖い。

この映画のさらにすごいのは、後半でガラッと趣きが変わるところだ。
普通の技量であれば、観客の集中力がそこで途切れそうなほどの展開だが、奇跡的に前半の緊張感を保ったままラストまで駆け抜ける。
ともすれば笑いと紙一重の表現も、世界観を崩さずに、むしろその世界を押し広げて見せる。
そしてすがすがしさすら感じるラストシーン!

なんじゃこりゃ。才能の塊か。

作りの話ばかりしてしまったけど、演技もとてもいい。
個人的には長男ピーターが子供のように泣きじゃくるのがすごく効いてると思う。
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