YN

アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングのYNのレビュー・感想・評価

3.5
私事だが、容姿にめちゃくちゃコンプレックスがある。
ので、この作品の予告編だけで「うっ」てなってたし、もしや「救い」があるんじゃないかという期待をしていた。
その前提が良くなかったのだが、結果的にこの映画は思ってたのとちょっと違ったし、救いではなかった。

どこが違ったかというと、問題設定が非常に浅くて、やや古臭く感じた点だ。
主人公は広義ではルッキズムの被害者だが、どちらかというと、「容姿をやらない言い訳にしているタイプ」(さらに言えば別にブサイクでもない)。
無論その価値観が形成されるに至るまでに、誰かから加害されているかもしれないし、そもそもそんな価値観が世の中に蔓延っていること自体の問題性もある。

が、21世紀になって久しい今日である。
「他者からのルッキズムの強要は跳ね除けていい」ということもまた、常識として共有されている時代だろう。

であれば、今日的なルッキズムの問題点は「それが愚かなものだと頭ではわかっているのにそれに振り回されてしまう」点ではないか。
つまり「醜い自分への自己嫌悪」ではなく、「醜さを気にしてしまう自分への自己嫌悪」だ。

このような時代において、この作品は、「人は容姿じゃない、振る舞いでも世界は変わる、あなたはそのままで魅力的だ」と熱いメッセージを送ってくれる。
それは正論だ。だが、そんなことはわかっているのだ。

コメディと割り切って見る分には笑えるし面白いが、自分にとって切実な問題である「ルッキズム」をテーマにした映画としては、むしろもやっとしてしまった。

この映画で革新的と言える点があるとすれば、むしろ周りの人々で、主要な登場人物はみな主人公を容姿でどうこう言わないし、美しい女性もコンプレックスがあるという部分を強調したのが良かった。
また、彼氏のイーサンがとにかくいいやつで、彼の恋愛観や審美眼はとても魅力的。ああいう男と付き合いたいね!
YN

YN