Miller

デイアンドナイトのMillerのネタバレレビュー・内容・結末

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

父の自死をきっかけに故郷に戻った明石は、父の知らない一面を知っていく。


明石は車両工場を営んでいた父が、車両の部品についての告発をしたことにより、仕事に関わる多くの人が苦しんだと言われ、金銭の要求もされる。
父の行動は正しかったのか。
明石は、父が車両工場の仕事だけなく、行き詰った工場のために犯罪行為に関わっていたということを知る。

明石は父の借金を返済するために、父が生前手伝っていた保護施設と犯罪組織を取り仕切る北村に従い、裏家業に手を染めていく。
明石は北村の保護施設で料理を担当し、子供たちとも接し、その中で絵を描き続ける奈々という少女と出会う。
奈々は保護施設の中でも年齢が高い方に属し、他の子供たちを見守りながらも、絵を書き続けていた。
奈々は両親が東京にいると聞いており、高校を卒業した後は大学で東京に行きたいと考えていた。
東京からきた明石に対し、奈々は興味を持ち、二人は距離を縮めていく。


明石が昼の稼業と夜の稼業に習熟していく様が、昼と夜の場面が交互に描かれ、テンポよく進んでいく。
暖かな陽光の時間と暗闇の中での時間の画作り、空撮による広大な風景と閉鎖的な空間が対照的に描かれる。


日々の生活を順調にこなし没頭してきた明石だったが、事態は展開していき、奈々の存在、自分の父親の存在と向き合うようになる。




以下ラストに触れます。















奈々は自分が、北村の妻を殺した男の子供で、父親は既に死んでいることを知る。
北村は妻を殺された際に、奈々の父を殺しているが、正当防衛として裁かれることはなかった。
奈々はその事を知り、本当のことを告げてくれなかった北村を責め、北村は死を選ぶ。

北村を亡くし主軸を失った組織は、三宅の画策もあり壊滅する。
明石は父を追い詰めた張本人である三宅を呼び出し、三宅を痛めつけようとするが三宅から「お前の父親は、死ぬ前に自分が間違っていたと謝っていた」と言われ、更に「お前全部間違っているよ」と言われた明石は、三宅を殺そうとするも思いとどまる。
三宅は思いとどまった明石を嘲笑う。


明石は父の正義を信じ、そのために悪の道に手を染めた。
そんな父にとっての敵だと思っていた存在から、父が自ら誤りを認めていたと知る。
明石にとって自分のやってきた行動と、明石の中の父の存在が揺らぐ。

両親に捨てられ、両親はどこかで生きているものだと考えていた奈々にとって、自らの出生と自分が置かれていた境遇を知る。
実の親は人を殺し、育ての親の北原はその父親を殺し、その後自分のために悪に手を染めながら保護施設を運営していたこと。
明石の父親が正しさのためにやっていたこと、北原が奈々のために行っていたことが、明石と奈々にそれぞれ突きつけられる。


明石は三宅を殺すことなく、ぼろぼろになった状態で保護施設に帰り、その姿を見た奈々は明石を抱きしめる。
日光が強く差し込む部屋の中で、全身が真っ黒になった三宅と奈々が抱き合うさまは、闇が光の中に溶けていく様だった。
共に自分という存在が揺らぎ、不安定になった二人が文字通り支えあって、光に照らされながらそこに立つ。
自分たちやその境遇は、正しさとは共になかったかもしれないが、傷ついた目の前にいる相手を認め受け入れる。



自らの行いを法によって裁かれた、明石のもとに奈々が訪れる。
奈々は、明石に対して東京に行くことを告げ、「正しいって何」と問いかける。
明石は「大切な人を守ること」と答える。
明石にとってこの問いかけへの答えは、もちろん父親や奈々のことでもあるが、北原を肯定し、北原に育てられてきた奈々を肯定する言葉だと感じた。
奈々は「明石は守れたの」と聞き、明石は奈々を見つめ続ける。



混乱の渦中で足元が揺らぎ、自分の中に正しさを見いだせなくなった時、大切な人に気づき、その人との関係性の中に正しさを見いだせば良いのではないかと考えさせられた。
Miller

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