雨虎

君の名は。の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

およそ10年前の作品と比べると、景色の描写はより繊細で光の様子も絵でありながらも眩しさを感じるシーンが多く、まるでその場でその光景を見ているかのような描写は新海誠監督の作品らしさがあり、より素晴らしいものとなっていた。

序盤は三葉視点で物語が進むため9月2日、9月5日の入れ替わりで3年の時差を仄めかしている点は入れ替わりのインパクトのある初見ではなかなか気が付きづらい。
また、建物の名前であったり、細かな行動の差が見られる点も面白い。例えば三葉が巫女をする神社は「宮水神社」で水を想起させるのに対し、瀧が通う学校が「神宮高校」と神社を想起させる名前となっていたり、体格が入れ替わり後ではやや変化しているような印象を与える立ち方や仕草な点も面白い。

この物語では様々な要素が盛り込まれている。タイムスリップ、入れ替わりはもちろん、神話、水、和歌などによって暗示している部分が非常に多い。
例えば月は複数回見ている人には気づきやすいだろう。三葉死亡以後では月は半月となり、二人が生存していれば満月となっている。
また、ティアマト彗星というメソポタミア神話の海の女神の名を冠しているが、この女神は大洪水を起こす竜とも例えられ、瀧という名前の暗示、さらに神話によれは世界創造の材料として体を半分に裂かれたともあり、彗星が割れるという暗示をしていたのだろう。
他に、和歌「誰そ彼と我をな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我を」は入れ替わった9月の和歌であの人は誰かと聞かないでくれという意味を持つだけに作中の「お前は誰だ」から『君の名は。』に変わった点は『君』という古文的呼び方の距離感の表現として良かった。
また、名前を忘れてしまう点はこの黄昏時が暗くなってわからなくなってしまうという部分と重ねている点も美しい表現ではあった。

避難放送をしても実際に避難する人が少なかった点は東日本大震災の様子を想起させ、胸が強く締め付けられる。避難の大切さを物語っており、強いメッセージ性が込められている。

本作ではどうしてそうなったかという説明が難しい部分が多い。それこそ誰そ彼が逢魔時を示すというように、ややオカルト的な表現もある。その点においては好みが分かれる要因となったように思う。

個人的には、終盤に瀧が誰かを探しているというシーンは『秒速5センチメートル』の主題歌である山崎まさよし「One more time,One more chance」を表現しているようにも見え、新海誠監督は愛に関しての言いたいことが一貫しており、それを表現しているのだとも感じた。
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