雨虎

ドラえもん のび太とふしぎ風使いの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

今作は短編の『台風のフー子』がベースとなっている。名前の由来であったり、短編でのテーマ、結末とあらすじとしては原作である短編に忠実な内容だ。
短編では台風の子の設定に寄った外観だが、映画ではマスコット感が強くなり愛嬌のあるキャラクターに仕上がっていたり、たった10ページしかない短編をうまく肉付けした作品だと思う。

またデジタル彩色に全面移行されたこともあり、色使いが明るい。今作のようなモンゴルを参考にしたと思われる草原や風といった明るい雰囲気の舞台では特にそれが引き立つ。そして作画監督が交代されたため、絵のタッチの変化もあり、大きく変わった印象を受ける。

短編『台風のフー子』では生き物を家族として迎える喜びについての内容が描かれている。同様に映画でもそういった内容があるが、映画は特に生き物に対しての描写が丁寧な印象だ。のび太の声優の小原乃梨子は愛猫の姿に重ねたとも言っており、特に力が入っているようにも思えたし、とても共感できる。

スネ夫がなぜあそこまで執着するのかは最後までわからずじまいだったが、敵役とはいえ重要なキャラクターとなったのは珍しい作品だ。大抵はささやかな活躍のみで終わってしまうため、少し寂しさもあっただけに今作は新鮮だった。

終盤、フー子が身を挺して守るという場面は特にペットがいる人からすると平静ではいられない場面だろう。声優・小原乃梨子が言うように叫びたくなるような内容だ。家族を喪う悲しみに襲われるため、そういう意味では何度も見たいと思える作品ではない。それほどまでに丁寧な描写でいい作品だったと思う。
雨虎

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