雨虎

シャーロック・ホームズの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

シャーロック・ホームズ(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この作品はあまりシャーロック・ホームズらしからぬ人物像に感じた。
確かに設定は外見は別にして、非常に忠実だ。ヴァイオリン、格闘技、知識量と本人の能力に関する内容以外に、壁に銃でVRと撃ち込むといったエピソードまで盛り込まれている。活動的な点も非常にホームズらしい。
ただ、言動は全く逆の人物像と言ってもいいぐらい印象が違う。どちらかと言えば泥臭いやり方が多く、紳士的とは程遠い印象で、原作のような神経質さはない。これを新しいホームズ像として見ることもできるし、設定だけの上澄みを真似たホームズ像として見ることもできる。
原作ホームズの言動を見て、外見を一から作り上げればこういったホームズをイメージするという人がいてもおかしくはないとも考えられるため、全く悪いホームズ像ではないと個人的には感じた。

『シャーロック・ホームズ』シリーズをベースとして制作された作品として見るのであれば、悪くないものだったのではないかと思う。
物語の構造自体は最初に犯人が判明しているため、ややコロンボ的な構造ではあるものの、仮説や証拠を確認していくという推理方法は確かにホームズである。その方法はどちらかと言えば地味な作業と言えなくもないため、今作のようなアクションが派手で見どころも多いこの作品を見て、そこから原作を知っていくという入口的、カジュアルな作品としては非常に楽しい。
アクションの際にも先に推理するというシーンではスローの演出もあり、この当時のことを考えると新しい演出だったのではないだろうか。個人的にはもう少し原作のホームズらしいスマートさを活かした演出があってもよかったような気もするが。

全体的にコミカルな場面も散りばめられており、緊張と緩和が多い。それだけにメリハリがついている作品で爽快だ。原作『シャーロック・ホームズ』は堅苦しい部分もあるだけに、真剣に読むと楽しいが、気軽とはいい難い。そういった差別化もできているような気もした。
雨虎

雨虎