Miller

ディーパンの闘いのMillerのネタバレレビュー・内容・結末

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

スリランカの内戦から逃れるため、見ず知らずの3人は父、母、娘の3人家族を偽装しフランスに入国する。
集合住宅に住み込みの管理人として働くディーパン、集合住宅の1室の家事を手伝うことになったヤリニ、地元の小学校に通い始めたイラヤル。
3人は集合住宅で、疑似家族として生活することになるが、逃れてきた先の集合住宅にも暴力が満ち溢れており、暴力に巻き込まれていく。


言語や生活に戸惑うものの、次第に環境に慣れ、活き活きとしてくるヤリニとイラヤルに対して、感情を表に出さず、仕事と生活を黙々とこなしていくディーパン。
そんな彼だが、手放さないように持ち歩いていた、内戦で亡くなった妻子の写真を遺影に収めて管理人室の壁に掛ける場面では、この場所で新しい家族との日々を生きようとする決意が伝わってくる。
3人が相互に愛着をもつようになり、寺院に行きコミュニティでの会食を楽しむ場面では、疑似家族でなく家族としての日々が映し出される。


平穏な日々は続くことはなく、スリランカでの過去、集合住宅での抗争、3人のもとに暴力は差し迫ってくる。


集合住宅内で銃撃戦が起こり、3人の関係性にも変化が訪れるが、ディーパンは、発泡禁止区域を白線で作り境界線を引くことで、集合住宅内に少しでも安全な場所を確保しようとし、更に自警団のようなものを作る事に注力する。
イギリスに行きたいと言うヤリニのためにお金とパスポートを自宅に置き、2人との別れを感じないように管理人室で寝泊りをするディーパン。
そんなディーパンの優しさに対し、最初は1人でイギリスに逃げようとしていたヤリニにも、気持ちの変化が訪れる。
明くる日、仕事で家事の手伝いに行ったヤリニが抗争現場の真っ只中に置かれてしまったとき、ディーパンは決死の闘いに臨む。


本作のハイライトであるディーパンの決死の闘いは、ディーパンに付き添うような撮影で映し出される。
白昼の中でのディーパンの壮絶なバイオレンスは、火炎瓶の白煙で敵の姿がはっきり見えない屋内での戦いへと続き、臨場感が途切れず数分間とは思えないほどの余韻が残った。


闘いの末、ヤリニのもとにたどり着くディーパン。
重傷であり混乱した状態のディーパンを見て、ヤリニはディーパンの決死の闘いを知り、ディーパンを抱きしめる。
その後の出来事とも、夢とも取れるラストは、その場所に根を張り2人を守ろうとしたディーパンが本当の家族となる、ハッピーエンドだと受け取りたい。



物語とはあまり関係ないが、劇中ヤリニからユーモアがないと言われていたディーパンだが、
荘厳な音楽がかかり、暗闇の中から光るウサギ耳を付けた真顔のディーパンが、スローモーションで画面手前側に向かい歩いてくるタイトルバックは、真面目が故の面白さが炸裂していた。
Miller

Miller