メモ魔

きっと、うまくいくのメモ魔のレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.4
最高の映画だった。
笑あり涙ありってよく映画広告で使われるけど、この映画以上にその言葉が似合う映画に俺はまだ出会ったことがない。

ぜひ世の中の学長に見てもらいたい作品。
学生が学ぶのは勉学でなく、自分の生き方であるべきだ。成績なんてものを社会は求めてないんだから。それを教えてくれる作品。
真面目な部分とシリアスな部分がしっかり分けられていて、見ていて飽きない点も良い。これで170分?じゃあ人生は1週間くらいだろうか笑

まず心を鷲掴みにされたのはランチョーが学長の怒りを買って授業をさせられる場面
[じゃあお前が授業をやってみろ]
ここからが良い。
[こんなのは工学じゃない]
[工学を教えようとしたんじゃない。教え方を教えようとしたんですよ。]
[みんな競争に夢中すぎるんだ。これで勝って何の意味があるの?知識が増える?NOだ。圧迫が増すだけ。大学は圧力鍋じゃない。、、、]
[ムチを使えばライオンも芸をする。でよそれは訓練で、教育ではないんです。]
あぁなんか心に来るセリフだなって思った。
学生は板書されたことをそのまま頭に入れて出力するためにいるわけじゃないでしょ?それじゃただムチを打たれて芸をする動物となに変わらない。教育っていうのは、学びたい気持ちに答えてあげることであって、こっちから強要することじゃないんだ。
ずーーっとこの20余年間、勉強に勉強を重ねてきたけど、塾でも大学でもそうなんだよな。結局学ぶことが好きなやつには勝てない。だってあいつらはなから競争なんてしてないんだもん。自分が何番なんてのは2の次で、自分が1番にしたいことで戦うことを喜んでる感じ。
成績ばかり気にしてきた自分だけど、学生時代もっと考えるべきは[自分が戦うこと自体を楽しいと思える環境を探すこと]なんだなって思った。
大学はそれを見つけた人のサポートをしてあげる場所であるべきなんだ。

次に心打たれたのはファランがカメラマンの夢を親に説得するシーン。
[最後の最後で諦めるなんて、世間に面目ない。‼︎]
[僕を育ててくれたのは父さんだ。父さんに納得してもらえるだけでいい。世間は関係ない。
写真家になれば、僕の少ない稼ぎで変えるのは小さな家や車だろう。でも僕はそれで幸せだ。幸せに暮らせる。父さん達の面倒も見るよ。お願いだ。]
----------ここからのお父さんが好き------------
息子の就職祝いに買ったパソコンを閉じて
[返してこい、、、
プロ用のカメラはいくらだ?パソコンの値段で買えるか?足りなかったら言え。
自分の人生を生きろ。]
親は好きで息子にムチ打ってまで勉学に勤しませる訳じゃないんだよな。自分が死んだ後も息子が不自由なく暮らしていけるようにと、愛が深いほど厳しく当たってしまう。だから息子が夢を語ってそれを仕事にしたいと訴えても、息子を想うからこそ反対してしまう。この熱情は瞬間的なものだ。いつかは冷めてこの道を選んだことを後悔する。そんな息子にさせたくない。その想いの伝え方がお父さんは不器用で伝えづらいのよね。
だからお父さん的には、これしかない。これで一生食べていきたい。これが俺の人生なんだ。っていう決意さえ息子に見せてもらえれば、それで良かったんだよな多分。自分がいなくなったあとも、この熱情さえあれば不自由なく生きていけるだろう。辛いことがあっても、好きな職がこの子を支えてくれるはずだ。そう思ったからお父さんはファランがカメラマンの道を進むことに賛成したんだろうな。本当にこのシーンは感動。
お父さん的には、自分を納得させるだけの熱量を持てる対象を見つけた息子が誇らしくてたまらなかったに違いない。
[俺の育てた息子は、いつのまにかこんなにも立派に自分の気持ちで人を動かせる魅力的な人間になったんだんだな]
と深く感動しただろう。
俺も、将来息子がこの道で食っていきたいといっても断固拒否しようと思う。でもその決意がこの子をこの先ずっと守ってくれる様な熱い想いだったなら、迷わず背中を教えやろうと想う。そう、両親はいつだって息子娘の味方なのだから。

次に心打たれたのはランチョーとファランがラージューのために卒業試験の解答用紙を盗むんだけど、ラージューがその解答用紙を破り捨てるシーン。
[変な親友だな。正直に生きろと言う一方でカンニングとは、、、
要らない。実力でパスする。でなきゃ落第だ]
成績に1番固執し、自分の今後が卒業という肩書きで決まると考えていたラージュー。そのラージューが解答用紙を捨てるなんて、、、
感動。成績が重要なんじゃない。卒業の箔を貰いに大学があるわけじゃない。中身があってこその卒業生なんだ。そんな決意が表れていてよかった。でなきゃ落第だってセリフもグッときたなぁ。絶対に落第しないっていう自信と、こんな成績で着く箔なんてものは今の自分にはもう必要ないよっていう中身の自分で戦っていける自信の現れをこのシーンから感じた。ラージューもファランもランチョーと出会ったことで自分の中にここまで変化を与えることができたんだな。学生時代ってやっぱ周りの環境が大切だなと思った。

でもやっぱ1番感動したのは学長がランチョーにペンを渡すシーンか。
[私の恩師は言った。君のような学生がいたら、このペンをやりなさい。]
学長がペンをランチョーに渡す。
[戻れ。勉強しろ。卒業試験に合格できなくなるぞ。]
成績こそが人間の評価基準であり、競争に勝った者こそが勝者なのだ。その概念で学生に圧迫を続けてきた学長。その学長が、教育のあるべき姿をランチョーに見出した瞬間がこのシーンに詰まってる。泣き崩れてしまうのは、自分に足りなかった部分が、自分が探し求めていた学生がこんなやつだったなんてと自笑する一方でこいつで良かったと安堵する感情の表れだろうか。とにかくこのシーンはこの映画で1番感動した。

さてここまでは感動した部分について触れたがこの作品、何が良いって笑いもあるところだ。
まず爆笑させてもらったのは遺灰を人質にとるシーン。
ラージュー[この壺カラだ。]
ファラン[カラ?、、?!]
[今カラって言ったのか?]
ファラン[違う、カラにしてやるぞ‼︎って言ったんだ‼︎]
このシーンめっちゃ笑った笑
チャップリンでもそうだけどやっぱ人間は
[真面目にふざける]のが1番面白い笑

あとはちょっとマイナーな所かもだけど、ピアの結婚式からピアを車で連れ去るシーン。
乗れ‼︎早く‼︎
で空いた車の後部座席がしっかり汚くて草だった笑
リアリティの塊笑

それに出産の時、掃除機が必要だ‼︎ってなって学長室の鍵をファランに渡すシーン笑
ここも面白かった笑
学長がすかさずファランに鍵を渡す、、、ところまではいいんだけどしっかりランチョーもファランに渡して学長の鍵何故か2つ現象笑笑
学長室に入ったことが確定申告された瞬間でした笑

までも1番笑ったのはやっぱ最後のシーンか笑
チャトルがこれでもかとラージューに今の自分が成功したことを自慢するシーン笑
契約先の大オーナーがまさかのラージューというオチなのが好きすぎる笑
[悪いが、貴社との契約はサインできない。]
[そんな、、、なぜです?]
[ペンを持っていっただろ。?]
[なんのペンです?]
[ウイルス学長のペンさ笑]
もう最高笑笑
他にも面白いところ。フッて笑っちゃうところ満載だけど長くなるから伏せとく笑笑

さてここまで良いところずくめのレビューになっちゃったけど、もちろん気になった部分もある。
まずピアがランジューに恋してしまうシーン。
あそこで踊りが入るのは、、、、
まあインド映画なら踊りが入るのは文化的にそうなのかもしれないけど、やっぱまだ慣れないな〜。踊らせる必要あったのか?

それとチャトルがスピーチをするシーン。なんかあそこまで無様だともはや笑いではなく可哀想になってくる。人を笑うのは良いがこれはやりすぎだ。チャトルが怒って殴り込んでくるのも分かるよ。普通に心が痛んだ。これイジメですよ。

あとはこの映画。笑いあり涙ありで満足度は最高なものの、それは最後の大団円があったからだ。正直最初の1時間半まではまぁ、良くて3.8点とかかな〜って思ってた。3時間映画に起承転結を付けようとすると序盤で低アクセルから入らないといけないのも分からなくないんだけど、、、
じゃあ2時間にするなり、踊りの部分を、削減するなり、やり方は色々あったんじゃないかなと思う。
気になったのはこの序盤の弱さくらいかな。

総評
学生のあるべき姿が詰まってる気がした。結局[好きこそ物の上手なれ]ってことなんよな。自分が必死で好きになれることを探すことを教育としてほしいし、学生にはそうあってほしい。
序盤は正直に言ってしまえばつまらないし、インド映画特有の踊りに振り回されることが多い。しかしそれを考えても余りある終盤に向けてのフルアクセル。見てて涙も笑いも止まらなかった。170分と少し長いけど、ぜひ最後までぶっ通しで見て欲しい作品。

最初のつまらなさを加味しても堂々の
4.4点
メモ魔

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