イカのおすし

フランコ・ネロ/強奪〜インサイダー〜のイカのおすしのレビュー・感想・評価

5.0
フランコ・ネロが主演のイタリアン・クライム・サスペンス、という事で『ユーロクライム』的な下品で荒々しいノリをイメージしたが、時代性もあってか少しテイストが違っていた。でもこれはこれで良かった。東映実録路線のつもりで観たら松田優作の遊戯シリーズだった、みたいな感じ。

普段は黒のカラコンと変装でヘボいオッサンを装い会社の経理課に勤務するネロが、現金輸送のタイミングを見計らって目出し帽で強盗を働く。で、ここぞとばかりに本来の青い目を晒してカモフラージュを計る頭脳プレーで、現場にいた関係者らをまんまと騙すことに成功。

というか普段を素にして強盗の時にカラコン入れた方が効率良くね?その方がラクだしミスも減るよね?という素朴な疑問がわいてしまったが、こっちの方が話しが拡がって面白くなるのだからゴチャゴチャ言うのは野暮ってもんだろう。

さて完全犯罪成功かと思いきや、まさかの凡ミスを連発するネロ。実はそれも巧妙な作戦でワザとやったのかとも思ったが、何のヒネリもなく単なるドジッ子だった笑。結果、何人かに犯行がバレてしまい、彼らに目を付けられてしまうのだが、欲に目がくらんだ市井の人々が横取りしようと悪人化して忍び寄ってくる展開はジュリー主演『悪魔のようなあいつ』みたいで面白い。

その後はネロの盗んだ大金を狙う脅迫者や意外なキッカケでシッポを掴む警察らとのサスペンスフルな攻防となるが、ネロは賢いのかバカなのか、ビビリなのか動じない男なのか、計画的なのか行き当たりばったりなのか、そこら辺がハッキリしないせいで言動の真意が読めず、最後の最後まで余計にハラハラさせられた。

2023年1月現在、本作は古いVHSでしか鑑賞する術がない。メーカーはなんちゃらエディションなんて言って同じタイトルばかり性懲りも無く再発売してないで、こういう埋もれた佳作の紹介をもっとしてほしい。いろんなハードルがあるとは思うが是非頑張って頂きたい。