イカのおすし

狼獣(けだもの)たちの熱い日のイカのおすしのレビュー・感想・評価

5.0
今まで存在すら知らなかった本作、U-NEXTのオススメに出てきたので何となく観てみたら最高過ぎて観終わる頃にはこの世で一番好きな映画になっていた。最近は新着作品がくだらない韓国映画ばっかりだし、もう解約すっかなーと思っていたが感謝の記しに継続しちゃいます!他じゃコレ観れないしね。

黒のスーツでビシッとキメたリー・マーヴィンが現金輸送車を襲う激しい銃撃戦で幕を開けるんだけど、いきなり場違いなロケットランチャーをぶっ放したり、子供が撃たれてウーって倒れたりして何かチョット変だゾ、と思ったらそんなのはまだ全然序の口で、その後ドンドンおかしくなっていった。

リー・マーヴィン演じる非情な強盗犯、ジミー・コッブが逃げ込んだ農場は変態一家が暮らすストレンジワールドだった。彼らに翻弄されるジミーの運命やいかに、ってあらすじなんだけど、先が読めない謎展開は見応えがある。

が、本作の肝は何と言っても農家の面々をはじめとした異様な人物描写の妙だと思う。いかにも変態でーすといった大雑把なステレオタイプではなく、各人のキャラ設定&演技が細かいところまでしっかりと作り込まれており、奥行きのある個性豊かな変態群像劇として抜群に面白い。とくに小っちゃいおじさん(兄)が良い味を出している。いつもトコトコと小走りしていて、犬が後を追うシーンとかたまらない。小さくて足に合わないという靴が妙にオシャレなのも笑える。

そしてこれには驚いたが【ブリキの太鼓】のオスカル君が出ているのがポイント高過ぎる。不埒で早熟で大物ギャングに憧れるクソ生意気な坊やを実に生き生きと好演していて感動した。

ミュウミュウも素晴らしい。ザキヤマばりのぱっくりケツアゴで決して美人ではないが、佇まいに得も言えない魅力がある。肝が座ってふてぶてしいのがまた良い。それと、妹役は【私のように美しい娘】の人らしい。あの映画はずいぶん前に観て面白かった記憶があるもののすっかり忘れているので同じ人と言われてもピンと来ないが、ここでは腰と頭とお股がアレな変態女を見事に熱演している。

しかし何と言うか、リー・マーヴィンとミュウミュウとオスカル君が同じスクリーンに登場するってシュールにも程があるだろう。漫画で例えるならゴルゴと岡崎京子とつげ義春がそのままごちゃ混ぜになった感じだ。そのくせ映画としてちゃんと成立しているのだから面白い。最高だよまったく。

こんな自身のイメージが損なわれかねないヘンな作品の出演をリー・マーヴィンはよくまあ引き受けたものだと思う。でも【ポイント・ブランク】もけっこう変な映画だし根は変人だったのかな?そういえばデビッドリンチは【マルホランド・ドライブ】でポイント・ブランクの影響を受けている、というか絶対ヒントにしていると思う。

あと本作を観る度に思うのだが、これまたナイス・(キチ)ガイなミュウミュウの旦那が「ヘリコプターから離れろ、頭吹っ飛ばされるぞ!」って言うセリフは【ゾンビ】のあのシーンが元ネタなんじゃないだろうか。

すっかり本作の虜になってしまい、この1ヶ月で10回は観たと思うが、それでもまだ観足りない。ハードボイルドでシュールで下品で愉快でクール、そしてクレイジー。全てのシーンが最高だ。

本作はテレビ放映された事があるそうなので(マジか!)、吹替え入りで是非ソフト化して欲しい。

今夜も観ちゃおー