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ディア・ハンターのYNのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.0
正直テーマは掴みにくいと思った。
序盤の牧歌的な雰囲気から一転戦場へ、そしてロシアンルーレット、そこからは心が壊れたひとびとを描く(ようにわたしには見えた)、と、映し出されるものが移ろっていく。
で、タイトルがディアハンター。たしかにディアをハントするシーンはあるが、デニーロがディアハンターであることがこの作品の中心にあるとも思えない。

ということで見終わった直後はまとめあぐねていたのだが、今思い返してみて、この映画を自分のフィルターに通すと、残るのは「儘ならなさと生き続けること」かなぁと思った。
物語を動かすアクションや決断というものがあまりなかったような気がする。
それでも時代が悲劇を連れて来たり、時間が慰めを連れて来たり、とかく世界はままならないがその中で朴訥に生きるひとびとの姿、で最後は終わったように思う。

苛烈なシーンも多いが、なんとも滋味のある作品だったと思う。

ところで気になったのは、デニーロとクリストファー・ウォーケンのホモエロティックな描き方だ。
わたしが邪なわけではなく、映画の視線は明確に、メリル・ストリープではなくウォーケンを「ヒロイン」として撮っていた(カサブランカばりのソフトフォーカスを見よ!)。
最初普通にゲイカップルの設定かと思ったぜ。
それがセンセーションだったり扇情的な要素で使われるわけではなく、おそらく本人も明確に自覚はしていない執着として描かれているのも、「儘ならなさと生き続けること」の表現を深くしている一因のようにおもう。
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