ヒデ

ラヂオの時間のヒデのレビュー・感想・評価

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
3.9
「そういうわけで大変申し訳ありませんが、ヒロインの名前が"律子"から"メアリー・ジェーン"に変更になりましたぁ!」

主婦が初めて書いた脚本がラジオドラマになるも、役者のとんでもなワガママでどんどんメチャクチャな方向に改変されていく話。

秀逸な脚本!三谷幸喜節が炸裂してて、103分間ずっと面白い。観終わった後に爽やかな気持ちになれるのも良い。設定が熱海の恋物語からシカゴ発の宇宙遭難スペクタクルにまで至るのは笑った。

この作品の脚本は無事だったのかとメタに勘繰りたくもなるが、これだけ面白いのなら改変されなかったのだろう。そもそも監督も三谷幸喜だし。

原作改変問題で世の中が揺れてる時に観ちゃったので、原作者の意思が無視されて役者やスポンサーの都合で設定が変わったり、ピンチヒッターの脚本家が自分の作品気取りで出しゃばりだしたりするところはちょっと笑えないが、作り手の矜持を感じるようなシーンもちゃんと入っているのが流石。音響効果のおっちゃんとディレクターの唐沢寿明はカッコよかった。

でもやっぱプロデューサーが八方美人だと作品は崩壊するのだな、と改めて思わされる作品でもある。原作者へのリスペクトは持とう。マジで。


以下、セリフメモ。


「"上を見上げた"。これは言葉の重複です。"頭痛が痛い"と一緒です。変えさせていただきます」

「ヒロインの名前がちょっとねぇ…。"律子"っていうのは前に不倫問題で騒がれた時の、向こう方の奥さんのお名前なんですよ。ヒロインの名前、変えてもらえませんかねぇ?」

「全部外人に…?」
「設定を、熱海からNYにしましょう!」

「あたし女弁護士がやりたーい!パチンコ屋より全然いいと思うんだけどぉ」

「頭のマシンガンの音どうしても欲しいなぁ。バイオレンスはこの作品のテーマだから」

「今日はいいの?泊まっても」
「あたしはいいけど…」
「誰かに側にいて欲しいんだよ。こんな夜はさぁ」

「向こうが女弁護士でくるなら、こっちが村の漁師じゃ釣り合いが取れない。パイロットで行きます」

「あたし、本を書く時、いつも頭にバンダナを巻くんです。これを巻くといいアイデアが出る気がして…」

「どうしてもマシンガンの音が欲しいんだ!」
「マシンガンったって色々あるよ。お望みは?」

「メアリー・ジェーンとマイケル・ピーターは海岸で出会うんでしょ?シカゴには海がない」

「ダムが決壊する音を準備するんだ!!」

「僕はドナルド・マクドナルド。パイロットだ」

「先生!突然ですが、マルティン親父のシーン追加で作ってもらえませんか?短いけど、強烈に印象に残るやつ!」

「パイロットっていったって飛行機とは限らない!宇宙飛行士もパイロットだ!宇宙で遭難したことにしよう!」

「ドナルドは宇宙から帰ってこなくちゃダメなんです!メアリー・ジェーンに会えなくなっちゃうじゃないですか!」

「皆さんの都合で、よってたかってあたしの脚本むちゃくちゃにしといて、よくそんなことが言えますね!!」

「俺たちに取っては百に一度の仕事かもしれないが、この人にとっては一生に一度のことなんだ」

「(二人が幸せになるラストがダメなのは)どうしてですか!?」
「まだわからないのか!?千本のっこが、嫌がってるからだ!軽蔑するならすればいい、我々はそういう世界で働いてるんだ!」

「お願いですから、脚本(ホン)の通りにやってください!!」

「我々が、いつも自分の名前が呼ばれるのを満足して聞いてると思ってるんですか?何もアンタだけじゃない。私だって名前を外して欲しいと思うこともある。しかしそうしないのは、私には責任があるからです。どんなに酷い番組でも、作ったのは私だ。そこから逃げることはできない」

「満足いくもんなんてそう作れるもんじゃない。妥協して、妥協して、自分を殺して作品を作り上げるんです。でもいいですか、我々は信じてる。いつかはそれでも、満足いく作品ができるはずだ」

「どうする?今帰ったらアンタの負けだ。おたくも作家の端くれなら、最後まで聞いてくことだ」

「牛島さん、これ以上変えたらあの人の本じゃなくなる。俺たちにそこまでする権利はない」

「誰に向かって口聞いてんだ」
「あの人のためじゃない!俺たちのためです!」

「ドナルドは俺が連れ戻す。必ずこの手で。俺の言うとおりにしてくれ」

「工藤、お前、どういうつもりだ…?」
「これから起こることは全部俺が一人で考えたことです。先に謝っておきます」

「(宇宙から戻ったドナルドは)そして…愛しい人の名前を叫んだ!」
「…寒い」

「メアリー・ジェーン…」
「…おかえりなさい」

(打ち上げ花火の音を作るために)「誰か、50円玉持ってない?」

「工藤さんのおかげです」
「勘違いするな。アンタのためにやったことじゃない。ただどんなに下らない本でも、作家の書いたとおりに作るのが俺たちの仕事なんだ」

「工藤、俺は時々虚しくなる。なんで俺はこんなことやってんだろうって。みんなに頭下げて、みんなに気を遣って…。何がやりたいんだ俺は!」
「自分で言ってたじゃないですか。いつかみんなが満足するもの作るんだって」

(トラックで会社に乗りつけて)「局の人?局の人?良かったよ今夜のドラマぁ!うわあああ〜ん!!」

「(続編制作のアイデアで)ハインリッヒの車なんだけど、あれ水陸両用車だったってのどうかな?陸専用って一言も言ってなかったはずだよ」
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