「実は俺、お前と付き合いたいと思ってきた。その程度(の脳性麻痺)ならなかなかの顔だ。可愛いよ」
前科持ちで家族から煙たがられる男と、脳性麻痺で一人暮らししている女性の純愛の物語。
これは凄い映画。コンジュ役のムン・ソリさんヤバすぎ。日本にこの演技ができる女優さんは存在しないのでは…。というか、恐らく何かしらのレギュレーションでこの作品は作れない。先日観た『月』も大概ヤバかったけど、それをはるかに超える衝撃だった。
個人的にコンジュが初めて口紅を塗ってルンルンしてるシーンが印象的。あのシーンで初めてコンジュにれっきとした意思があることを感じた。最悪な出会いをしてしまった二人なのに、なぜか惹かれ合っていく。ベタな内容だけど、お互いのバックグラウンドが激重なので他の恋愛作品とは一線を画している。
劇中ではたびたびコンジュの空想が入り、"脳性麻痺ではない姿"でジョンドゥと恋人のようなやり取りをする様が映し出される。悲しすぎるif。でも彼女が感じているのは本当の幸せ。爽やかで切ないやりとりが胸を打つ。
最後、二人の関係が誤解を招いてからのラストにはかなり胸打たれた。決して明るい終わり方ではない。でもどこかに希望を感じる。
ロビンソンの歌詞でいう「誰も触れない、二人だけの国」がドンピシャで表現されてる作品で、この映画はしばらく忘れられそうにない。渋滞中の高速道路のど真ん中で、ジョンドゥがコンジュをお姫様抱っこしてグルグルぶん回すシーンがとても好きだった。
以下、セリフメモ。
「お前も大人になれ。大人というのは好き勝手に生きてはダメなんだ。社会に適応できるのが大人だ」
「聞きたい…ことが…あって…電話しました」
「なぜ…なぜ私に…花を届けてくれたの?」
「お前の名前、本当にコンジュ?姫(コンジュ)というほどはイケてない。俺の先祖は将軍だったんだ」
「これからお前を姫って呼ぶよ、お姫様」
「じゃあ…私は…将軍って…呼ぶわね」
「何の色が…好き?…私は…白が好きなの」
「俺も白が好きだ。綺麗だから」
「私がもし…詩人だったら…あなたのために…詠いたい…」
「オアシスの絵…?何が怖いんだ。ただの木の影じゃないか」
「でも怖いの」
「今消してやるからちょっと待ってろ」
(道路上でお姫様抱っこして回りながら)「姫君!ここがチョンゲ高速道路でございます!滅多に来れませんよ!」
(客の車を勝手に運転したのがバレて)
「無免許で人の車を勝手に運転していいのか?言っただろ?自分の行動に責任を持てと」
「覚えてる?交通事故で死んだ清掃員。俺が刑務所に入ったのはそのせいなんだ。(ここに連れてきたのは)その人の娘だ」
「ジョンドゥ兄さん、よく聞け。身代わりになると言い出したのは兄さんだろ。誰も強要してない。事故を起こしたジョンイル兄さんは、会社勤めもあるから身代わりになるって。そう言ったろ?」
「行かないで…。一緒に…寝ましょ。女が…一緒に寝ようっていうことが…どういう意味かわからない?」
「この程度(の障がい)なら…可愛いって言ったでしょ?」
(警察に迎えにきた兄弟に対し)「この人は強姦の容疑で逮捕された。電話に出た方?被害者の家族が話たいそうです」
「人間として理解できないね。お前、ハッキリ言ってあんなのに性欲湧くか?」
「この子は緊張すると話せなくなってしまうんです…」
(木を切り落としながら)「姫君!!」
≪姫君。愛しのお姫様。将軍でございます。お元気でしょうか?私も毎日元気でございまする。臭い飯(コンバブ)も食べてます。臭い飯といっても豆(コン)は入っておりませぬ。時々ご飯に豆が混ざってると姫を思い出します。シャバに出てきたら、美味しいご飯をご馳走いたします。≫