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フィツカラルドのKANAのレビュー・感想・評価

フィツカラルド(1982年製作の映画)
4.0

ヘルツォーク渾身の力作であり、代表作ということで。

19世紀ペルー。
熱心なオペラファンのフィッツカラルド(クラウス・キンスキー)は、アマゾン奥地にオペラハウスを作りたい!という野望を抱く。
その資金繰りのためにゴム園を開拓すべく、蒸気船で川下りならぬ川上りをし、船ごと山越えをさせるという突拍子もない計画を実行しようとする。

山を登る船。
まるで漫画のようだけど、特撮なし、現地のインディオ数百人を巻き込んでの長期ロケ(4年?)で完成させた映像の迫力が凄すぎる!!

もうほぼアマゾンの秘境を進んで行くドキュメンタリーといっていいと思う。
『アギーレ/神の怒り』のレビューには「神秘性は一切感じられず」と書いたけれど、こちらはその神秘性が大いに感じられた。
悠久の自然美とでもいうか。
薄紫色の夕暮れや、川越しの満月の画面にうっとり。

フェリーみたいな大きな船をロープで引っ張り上げるための滑車の取り付けやレール敷きや各装置作りの作業工程(もちろん全て手動)を、大勢のインディオたちがチームワークで行う画も圧巻!
気が遠くなるような事をCGでなくホンモノでやってるんだからスゴイ!

山を超えた時はフィッツカラルドとともに「やったー!!」と叫びたくなるカタルシス。
お金稼ぎはもはやどうでもよくなる。

このクライマックスとともに素敵だったのが終盤の船上のオペラ団演出。
アマゾン×オペラの融合なんてまず思いつかない。
結果思惑通りにはいかなくとも、ラストのフィッツカラルドは今を生きている実感を味わうような、この上なく清々しい笑顔だった。

このキンスキーは意外にも穏やかで常識的に見えた。
部下もインディオたちも対等に扱うし、それだけ信頼を得てるのもわかるからどんどん応援したくなる!
ハンモックでCC演じる恋人と子供みたいにじゃれ合うところなんかすごく微笑ましい。
まさかキンスキーに癒されるなんて本当に予想外。笑

為せば成るというか…この映画自体がヘルツォークの狂気に思える。


p.s. 最初フィッツカラルド役はジャック・ニコルソンが決まっていたそうだけど、病気で実現せず。ちょっと残念。
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