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アギーレ/神の怒りのKANAのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
3.7

ヴェンダースやファスビンダーと並びニュージャーマンシネマを代表する鬼才、ヴェルナー・ヘルツォークによるカルト作品。

スペイン人がインカ帝国を滅亡させ、アマゾン一帯を支配していた1560年頃。
アマゾン奥地にあるという伝説のエル・トラド(黄金郷)を目指すスペインの探検隊の顛末。

FFコッポラの『地獄の黙示録』に大きな影響を与えたというのがよくわかるワイルドなロケーション!
アンデスの雲海の中、急斜面の岩肌に沿って進む部隊を見下ろす俯瞰のオープニング。
大自然の中のちっぽけな人間。一歩踏み外したら奈落の底。
この無言の数分からして監督のただならぬ気迫を感じる。

なんといっても副隊長アギーレを演じたクラウス・キンスキーの怪演に終始圧倒される。
インディオからの攻撃や飢えで危機的状況に陥るほどどんどん横暴になっていき、狂気をむき出しに。
仲間が何人殺されようが、エル・トラドへの野望は捨てない。
もはや自国スペインへの忠誠心すらない。
一行の秩序は崩れる一方。
ラスト、イカダでサルたちや死体に紛れてただ一人佇む彼のモノローグには寒気がする。
どこまでも悪あがきする虚しい自惚れ…

同じイっちゃってる演技でも、ジャック・ニコルソンだと可愛げ(≒色気)が感じられるけど、キンスキーは素でやってるようでただただ気味悪くて怖い。(顔アップの圧がスゴイw)

映像としてはジャングルのジメっとした湿度やツヤツヤした緑、インディオたちの鮮やかな衣装が目にうるさいほど眩しかった。
(何せこの前に観たのがモノクロ幽玄美な世界だったのもあり笑)
『地獄の〜』のストラーロ カメラが表現してたような神秘性は一切感じられず。

エンタメとは程遠く、極限状況のドキュメンタリータッチといってもいいくらい。
キンスキーの怪演は見ものだったし、大航海時代に実際に行われていた事の生々しい描写が純粋に興味深かった。


p.s. スペイン人なのにドイツ語って…せっかく歴史ものでもあるのに勿体ない!

p.p.s. みんな小汚い格好な中、同行していた二人の高貴な女性の出立ちはあくまでドレッシー。アマゾンには場違いなのがすごくシュールだった笑
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