暗く死後の世界にでも迷い込んでしまったみたいなモノクロの風景。
もの悲しい音楽と、ゆったりとしたテンポ。余韻まで写すような長回しの連続。
奇妙で侘しい雰囲気が特徴的でした。
主人公のヤーノシュは、天体や神のみわざについて語る好奇心の強い男。
彼の住む田舎町にクジラを引き連れたサーカスがやって来ることに。しかし、一団の中にはプリンスと呼ばれる扇動者が混ざっていました。
プリンスは破壊の後に純粋なものが生まれると主張します。
やがて彼に心酔する者たちによる破壊が起こり始めます。
町の有力者と関わりのあるヤーノシュは否応なく騒動に巻き込まれていくことになっていきました。
クジラ、薪窯、ヴェルクマイスター音律など象徴的なものが並び、不協和の物語を特異なものに仕立てていきます。
物足りないとも言える雑味の無い作風は芸術的だと感じました。
不安、怒りの爪痕がはっきりと心に残っています。
