薄暗い部屋にときおり陽気な風が吹き込んで来るような、侘しさと少しの希望がありました。
小さい劇場でほぼ満席。
始まってあまり間も無くあちらこちらでコックリコックリ。
静かでしっとりとしていて、とてもゆったりとしたテンポで物語は進んでいきます。
物書きとなった元映画監督が主人公。初老のしかめっつら。そんな男は喪失感を抱え、海辺のトレーラーハウスに愛犬と暮らしています。
行方不明になった人気俳優となかなか動き出さない止まった時間。
とても静かなスクリーンの中、ゆらゆら揺れるタバコの煙と空になる酒のグラスがよく登場します。
やがて主人公のもとへ一本の連絡が入ります。俳優に似た人を知っているというものでした。
それは、タンゴ、かつてのマドンナ、フィルム、友情。主人公の過去を振り返させるものでもありました。
始まりがあって終わりが来る、そして終わりから始まりへと続いていく言葉にならない思いの深さを感じました。
ラストシーンをより味わうためにも映画館で観たい作品ですね。