EnzoUkai

ノスタルジア 4K修復版のEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)
4.9
この作品については、言わずもがな「寝る」映画の代表格で、誰が見ても寝るからこそ世界最高の芸樹作品だと断言できる。
私も何度見ても必ずどこかの場面でウトウトしてしまう。もう、何度も観てるからウトウトしても無問題。
話だって大して何かすごい展開があるわけではなく、極端に言えば話なんて分からなくても良い。
ただ、その画面や音に身を委ねさえすれば良い。
そんな映画、他にはないだろう。
(無いと言ったら語弊があり、そういう実験映画は沢山ある。ま、それは置いといて)

今や私は4K警察と言って良いほどリマスターには厳しい。最近は本当に4Kなの?ってリマスターも多い。
4Kの凄い作品は沢山あるし、やはりお金を掛けて丁寧に4Kリマスターされた古典は多い。
ただ、『地獄の黙示録』や『ブレードランナー』、これら1980年代のリマスターは昨年撮ったんじゃないの?って言いたくなるほどの画面になってるから、ここら辺が私の基準になってくる。

で、この『ノスタルジア』。
今回は4Kと言うことだが、実は10年前のHDリマスター版が最高に良い。
私のリマスターの真の基準は間違いなく、この『ノスタルジアHDリマスター』であり、昨今の4Kはこのレベルの修復の足元にも及ばないものが多すぎる。
同年公開の『戦場のメリークリスマス』の4Kリマスターの残念な出来には閉口してまい、それはここFilmarksのレビューに思わず『ノスタルジア』の名前を出して批判した。
『ノスタルジア』をVHSやレーザーディスクの画質の悪さがオリジナルだと思ってた私は、このHDリマスターを見た時に腰を抜かした。
これは、当時日本で公開されてたヨーロッパ作品がほぼ似たような画質の悪さで、ヴェンダースの『パリテキサス』の最近のリマスターも腰を抜かすレベルの良さ。
オリジナルそのものが、市川崑じゃないけど、銀残しでわざわざ発色を抑えてるものだと思ってた。さにあらず、『パリテキサス』なんて目に痛いほどの赤い発色が素晴らしかった。

今回の4KリマスターはあのHDリマスターから若干解像度が上がってる。まぁ、手放しして大喜びと言う感じではないが。
それでも、非常にヴィヴィッドな彩度は見ているこちらに強烈なインパクトを与えてくれる。油彩の表面の質感みたいなものすら感じさせてくれるが、それは決して人工物のそれとは違う。自然、若しくは時間の作った造形美のようなものだ。
カラーパレットで見比べなければ分からないような淡色や同系色の調和。そして、水や空気にも色が施されてるのではないのかって思えるほどカメラが追う雨、水たまり、流れ、煙、こうした普段あまり気にも掛けない存在に気付かされる。
そして、音。
この作品のオリジナルはモノラルらしく、リマスター作品もモノラルのまま、5.1チャンネルとかに置換されてるわけではない。
しかし、オリジナルのサウンドデザインは完璧で、四方八方から必ず何らかの音が聞こえてくる。ほんと、劇場の座席に座ってることが心地よくてたまらない。
もし、次再びリマスターされるとするなら、この音が立体音響化されることになるだろう。後はそこくらいしかいじくるところは無さそうだし。

今回、この映画を映画館で見ることができたのは貴重な体験だった。
無論、映画館で見ながらうたた寝させて貰ったのも貴重だった。
まだもし映画館で観ることが出来るなら是非とも映画館に足を運んでください。
映画館でお金を払って寝てください(笑)

この映画、この映画の終盤部分、と言うか、この映画の肝の部分、実は自分のあることに対する理解を大きく深めてくれた。一瞬、書こうか書くまいかと逡巡したけど、書こうと思う。
でも、それはコメントコーナーにネタバレ書こうと思う。。
EnzoUkai

EnzoUkai