此岸と彼岸が交差する切ない幻想譚。
もう逢えないはずの両親との再会は、不思議とリアルが混在したシーンだった。お互いに心の内を話し、許し、愛してると伝え合う。過去の悔いが氷解する描写が静かに沁みる。
アダムとハリーの印象的な会話。
「両親だ 僕が12になる前に死んだ」
「つらかったね」
「昔のはなしだ」
「時間は関係ない」
心の傷になるような出来事は何年経っても辛い。それを理解し、寄り添うハリーの優しさ。
主要な俳優4人の繊細な演技が良かった。
眠りから目覚めたり、アルコールやドラッグでハイになるシーンもあるので、夢か幻覚という捉え方もできる。あえて曖昧にし観る人に託したのだと思うが、原題が『All of Us Strangers』だと知ってドキッとした。おそらくはアダムも異人なんだ、と。
脚本も書いたヘイ監督の翻案力が凄いと思った。セクシャリティに関わらず、この世に居場所がないと感じる人はみんな“異人”なのかも。「あなただってそうだよね?」って見透かされたような気になる。
※ 『異人たちとの夏』短文感想をコメントに