し帆

52ヘルツのクジラたちのし帆のレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.3
奇しくも自分の誕生日にこの作品を見ることができたこと、
ちゃんと意味のあるものにしたいと思った、
作品の中には昨今の様々な問題やタイムリーな出来事が、
丁寧かつリアルに描かれている、
虐待、親の離婚、ヤングケアラー、育児放棄、トランスジェンダー、性的マイノリティの人に対する偏見や差別、
これらのこと分かった気にならないようにしないとと思ったし、
自分と関係ない話としたくないと思った、

最初はキコちゃんのお話、幼い頃から認めてくれる相手がいなくて、
愛されたいと願った親からは、暴力を振られ
半強制的に血のつながらない父の介護を強いられる日々、
彼女が泣きながら言った、家族だから、がしんどかった、まさしく呪い、
変わっていく彼女、世界を知って笑顔が増える彼女が素敵だった、
初めてできた恋人、いい人だと思っていたけど
束縛と差別意識が強い人で、
なんでこんな人を信じてしまうんだ〜、と思ったけど、
今まで認められたり、好きと言われる経験があまりないからこそ、
ちゃんと伝えて自分を見てくれる人に、
依存してしまっていたんだろうな、とも思う、
( だからこそある程度の人を見て、関わり生きていくことって大事だよね )

アンさんのお話、原作もストーリーも知らず、
唯一持ってる情報として、LGBTQに属する人であること、それを踏まえて作品を観ていて
キナコに本音を伝えてもらった夜に、悩みながらホルモン注射をしてる姿を見て理解した、
ふだんの気さくで頼りがいのあるアンさんからは、
想像もできないからこそ、対比が切なく辛かった、
誰にも話していなかった中で、いつかちゃんと話さないとと死にたくなる夜を過ごした中で、
予期せず人に暴露され親にも知られてしまい、
自分が保てなくなったように叫び泣く姿が、もう想像もできないくらいの絶望だった、
年代的に仕方がないかもしれないけど、親には障害と言われたり、
同情が傷つけることだってあるし、
結果、最悪の決断をしてしまった、
マジョリティにいるからさ、全てを慮るなんて無理で、
また人それぞれ悩みのポイントも違うだろうから、
単純に悲しいとかは言えなかった、
ただアンさんの場合として理解しようとした、

52、愛、いとし
キコに出会うまで、まわりの大人がなんとなく存在を知り
小学校に行っていないことを知りつつも、
助けられなかった現状も他人に入り込みすぎない時代のせいなのか、、
喋れなくなった理由も、母親も胸くそすぎたので思い出したくないけれど、
キコに出会えたこと、そしてキコも52に出会えたこと
それだけは絶対に正解だし、
キコがアンさんにやってもらったように
いろいろな手続きを怠らなかったことも、
すばらしいと思った、
これから2人は生きることを、一生懸命に考えて、生きていくんだろうな、


キコ、たくましくてかっこよかった、
彼女は人や物と全く触れない闇の時間があったし、
そのせいで失敗した人間関係もあったけれど、
その時間があったからこそ、家族や恋人と決別して、
今は見逃すことなく、人やものにちゃんと向き合う強さを持っている、
当たり前にたくさんの人やものに触れてきて、
勝手に形成されて凝り固まった固定観念や
自分のことばかりなわたしには、
それらは簡単じゃないし、
どう見られるかとか気にする時点で、
まだわたしはキコみたいにたくましくなれない、、
そしてミハル!あなたの人を受け入れて寄り添っていく力にも憧れる、
こちらも簡単じゃないよ、ちゃんと友だちを大事にしたいと思ったし、
あの2人の関係は、もともと友だち同士の花ちゃんと花梨ちゃんだからこそ出せる
空気感だったよな〜と最後の涙を見て思った、
最後はアンさん、
あなたの一歩でキナコが助かった、それだけは紛れもない正しい事実、
人のために尽くし、人を想う力は、あなたのもので、
偽りでもなんでもなく、アンさんだからできたことだと思う、
これからもっとより良い世の中にするために、
どんなセクシャリティ、人種、ルックスであれ、
平等な権利のためにできること、
平和を願うだけじゃなく、学びたい、
誰かの聞こえない声を、救いとれる人間になるためにね、

時間ができたら原作読みます〜、、
CINRAの対談企画が素晴らしく、花ちゃんとインクルーシブディレクターさん、インティマシーコーディネーターさんの考えを
しっかりと知ることができました、
日本の映像作品で傷つけられてしまった人にもう一度だけ信じてみようと思って欲しい、
その花ちゃんの聡明なコメントに、覚悟と意思が伝わった、
真摯に作られた作品は、大事にされるし、学ぶ機会をくれるし
問題提起もしてくれるから好き、
今回も素晴らしかった花ちゃん、すばらしい
し帆

し帆