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枯れ葉のeのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
壮年の男女がカラオケバーで出会いました。
ふたりとも労働者として下層階級に生きています。
不器用で孤独。心の穴が見えるよう。
理想無く、人生を眺めているだけだったような主人公たちに訪れた幸福の予感。
しかし、その穴が恋をどんどん遠回りさせてしまいます。

ラジオから流れる戦争のニュース。
現実を突き付けるような、機械的な管理システム。低賃金の肉体労働。
女は空虚さにうつうつとし、男は酒に溺れています。
そんな中、それぞれ不手際からさらに生活状況を薄氷化させてしまうことになります。
そんなふたりの行く末は…という物語でした。

おんぼろの町並みを舞台に、抑制が効いたテンポと色彩で渋味あるシーンが並びます。
一方で、歌を、映画を、演奏を楽しみ、労働後の一杯とジョークを楽しむ市井の人々の姿も描かれました。

内向的なふたりのささやかな前進や、すれ違いを眺めているうちに、思わず励ましたくなりました。
日々知らず知らず溜まっていた焦燥感。それをそっとほぐしてもらった気がします。

スクリーンから溢れ出るノスタルジー。素敵な時間でした。
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