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ポトフ 美食家と料理人のeのレビュー・感想・評価

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
4.0
冒頭から調理場に入り込んだかのようです。
克明な調理場面が続きます。

腕を振るうのは家主のドダンと、女性調理人のウージェニー。
湯気が立ち上り、鍋やフライパンが忙しく行ったり来たり。手際良く調理された食材たちが次々と見事な料理に姿を変えていきます。

助手のヴァイオレットが配膳に向かう先では来客たちが腹を空かせて待ち構えていました。
彼らは見事な料理の数々に感嘆を漏らします。美食で名高いドダンと才華あるウージェニーに賛辞を贈りました。

人里離れた農園付きの屋敷。ふたりが多くを過ごす広い厨房に陽光が差し込みます。そこに流れる空気は緊張感よりもたおやかなものでした。それは、ふたりの関係性がもたらしたもの。
しかし、長い時間を掛け築いてきた暮らしのバランスに変化のきっかけが訪れて…

降り注ぐ自然光。淡く照らす蝋燭や暖炉の炎。どのシーンを切り取ってもきっと美しいだろうと思います。
背景や設定は遠景として詳細には語られません。とても寡黙な物語でした。

遠い国の遠い時代。そんな別世界が手触りあるものになっていたのは、一つ一つの料理が丁寧に描かれていたからだと感じます。
時間ごと再現された歴史と文化の断片とともにとっくりと煮込まれた気分です。
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