東京、亀戸。
ほど近くにスカイツリーが立ち、夜にはキラキラと輝くのが見えます。
今にも取り壊されそうな古い木造アパート。
そこに住む平山さんは、無口でプロフェッショナルなトイレ清掃員。
利用者に心無い態度を取られても朗らかに過ごしています。
彼の部屋には沢山の本やカセットテープ。そしてフィルムカメラや植物と、豊かな内面世界を感じさせる物で囲まれています。
繰り返しの毎日の中に、小さな変化や楽しみを見つけ、噛み締め味わうのがとても上手です。
時代にも慣習にも社会的地位にも縛られず、愛する趣味に囲まれて、一人でマイペースに生きている姿は、先を急ぎ合う社会からは羨ましくも変わり者に映ります。
ほのぼのと過ごす平山さんの元にある日、突然の来訪者がありました。
それをきっかけに、孤独ながらも自由で満たされた生き方をしてきた日々に、簡単には割り切れない後悔の影が近付いてきて…
始まりから終わりまでじわりと感動しっぱなしでした。
夢と現実の境界やカーステレオから流れる劇中歌。無口な主人公の心情を代弁するような演出、素晴らしかったです。
人の数だけ世界が生まれて、手ぶらで来て、手ぶらで去ってゆく。繋がることはできなくても愛しむことに価値があるのだと感じさせてくれました。