蛙

夜明けのすべての蛙のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
「男女間であろうとも、苦手な人であろうとも助けられることはある」

少し前まで自分の弱さを曝け出すのは、社会/集団の中で到底受け入れられなかったと思います。仕事を始めてすぐの頃、当時のメンターに教えられたのは「舐められたら、周りのヤツラは言う事なんか聞かなくなるぞ」というもの。その発言が端的に表す様に、当時、誰かの欠点は修正されるべく批判に晒されるか、ツッコミの名の下に必要以上に笑い者にされるか、基本的には避けられ、忌み嫌われる存在だったと思います。
そして私は、ごまかし、隠し、弱きを叩き、強きに媚びる、地獄の様なスパイラルの中、社会人として多くの時間を過ごしてきました。一面的過ぎる説明だけれど、それが(嫌だけど)事実だったとも思います。

前置きが長くなりましたが、本作で提示された弱さを補い合う世界。
一種のファンタジーだけれど、そこに現実味を感じるほどに環境は良い方向へ変化してきたと実感しています。まずはその事を嬉しく思います。この映画が多くの方に支持されている事もその証左なのかと。
そして制作をされた関係者の方々が、原作の段階で、それを映像化する企画の段階で、映像を作る段階、それぞれ物語が持っている力を十全に伝えようとした意志を感じ、頼もしく嬉しくなりました。
原作の瀬尾さんが語っていた「原作とは違う方法だけれど、そこに現れた物は、原作で伝えたい事だった」というのは、映像化に関する問題が表面化している中、希望を感じ、映画を好きで良かったと思うコメントでした。

三宅唱監督、昨年の『ケイコ目を澄ませて』に続き、これからも目が離せないです。
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