蛙

オッペンハイマーの蛙のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
複雑で重層的な話で描かれた、強い反核、反戦の意思を持った作品だと感じました。

クリストファー・ノーラン監督らしい、時系列が入り乱れた複雑な物語の作り、そこにアカデミー賞ノミネート/受賞した美術、撮影、音楽や視覚効果が加わり、映画としての完成度は文句なしだと思います。

オッペンハイマーの描かれ方も、優秀な物理学者としての側面も見せながら「不倫を繰り返す」「興味が無い事には無関心」「林檎殺人事件」など、自分の興味や欲望のままに行動を繰り返すが、その結果の責任を突きつけられると、深く後悔する。単純な悪人でも善人でも無く、弱い面を持つ、人間らしい人物としての描かれ方が印象的でした。

作品のテーマでもある「なぜ原爆が作られて使用されたか?」「なぜ大量の核兵器を保持した世界になってしまったか?」その問題や答えをただ提示するのでは無く、複雑な作りの物語の中に、人間らしい多面的な人物達の描写の中に、散りばめられた気がしました。個人や集団のエゴ、外的な状況など条件が重なると、簡単に人は恐ろしい決断が出来てしまう事に改めて恐ろしくなりました。

クリストファー・ノーラン監督の技巧的な手法や、複雑なドラマを真正面から描いた事が、作品のエンタメとしての魅力にも、核兵器の問題を考えさせる推進力にもなる、アカデミー作品賞も納得の力作だと思いました。
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