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ロストケアのhuaのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
4.0
日本の社会問題を分かりやすく、時には残酷なまでにえぐり出す。
老人介護の現場を舞台にした小説の映画化。

若い人も含め、決して他人事ではないテーマである。
社会が、国が即刻どうにかしなければならない問題であり、親の介護に明け暮れ、仕事ができず収入を絶たれた介護者たちは生活保護も受けられない。
これでは親と共に介護者も壊れてしまう。

少ない年金で不安を抱えて暮らすよりも、雨風を防げる住まいと医療、3食が保証される刑務所に入りたいと懇願する老人が印象的だった。

そして柄本明さんの演技に震えが止まらなかった。
息子を苦しめていると理解し、「人として死にたい、殺してほしい」という言葉が重くのしかかる。

検事より犯人が言ってることの方が正しいと思えてしまう。
あなたは父のようになっても生きたいですか?
という犯人の問いかけに動揺する検事。

殺人は殺人だけど、介護する側もされる側もその苦しみから解放させるという意味で、殺人が間違っていないと一瞬でも思えてしまう。
答えの出ない問題であっても、国は議論を避けてはいけないし、誰しもが決して目を背けてもいけない問題なのだと改めて思う。
それを考えるきっかけとなる意味のある作品だった。

自分の親のこと、そして自分自身が老いていった時に、家族が安全地帯にいられるためにどうすべきか、考えずにはいられなかった。
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