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TAR/ターのmorinaliのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
民族音楽にのせて、エンドロール的なクレジットロールから始まるオープニングからして、只事じゃない感。
ケイト・ブランシェット様の今まで見たことのないような迫力に、ノンフィクションのドキュメントを観ているような胸騒ぎと共に、一気に引き込まれた。

権力による人間の業や狂気、栄光と衰退、そして芸術とキャンセルカルチャーなど、権力者の光と闇を鬼気迫るケイト様の演技と、極上のストーリーテリング(キャストと伏線配置が秀逸!)で描いた、あっという間の158分。

芸術家についての物語ではあるものの、権力ヒエラルキーを要する様々な社会に置き換えることができるという巧みな作品。

しかしながら、鑑賞中からずっと気になっているのが、女性が活躍しづらい環境で、女性(またはトランスジェンダー)が伸し上がってゆき、権力を手にするための方法や言動が、特権層である男性の権力者と同じでなりえるのだろうか?と、この辺のリアリティラインがうまく呑み込めまかった。
(ひょっとして、男性指揮者想定で作られた?とも思ったが、監督曰くケイト様あて書きの作品とのこと)
あと、ラスト。権力片手に周りの人々を好き勝手蹴散らしてきた人物を西洋からアジアへ左遷、からの再出発(希望!)という感じが、アジアも虐げられてきた人々のこともナメてるのか、と思ってしまった私のような人間に対してキャンセルカルチャーの罪を説いているのだろうか?

圧倒的に好きと言いたいし、間違いなく凄まじい作品だけれど、上記二点がずっと靄って晴れない。
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