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すずめの戸締まりのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
熟練者や達人は、凄いことを見てる方に「凄い」とさえ思わせずにやってのける。新海誠の近作「君の名は。」「天気の子」に比べて、今作はその辺が際立ってた。
物語への引き込みと世界設定の説明が絡み合ってて、あっという間に序盤が消化される。アニメーションや声優の演技など統合的な演出のおかげで、観る側にとって謎の部分があったとしても「ここはきっとこうなってる」という脳内補完が効く。そして観てる間に向こうから答えがやってくる。まるで年イチコンディションのサーフィン。軽くパドリングするだけで綺麗に割れる波に乗せてもらえてて「オレ上手いよ!」と錯覚させてくれる。それくらいの「気持ち良さ」が周到に用意されてる。
大地に宿る神や精霊、古代から伝わる神道などを源にする伝承譚、みな既視感があると言えばある。それなのに「それ見たことあるよ」とならないのは、まさにそれらが「今ここに生きている」おれたちが民族的に備えている「土着信仰」とも呼べる精神性に基づいていて、あまりに普遍的だからだろう。
映画の中での「常世」と「現世」の理も、解放に至る結末も、波に乗ってる間にたどり着いてしまう。スゴい引き込みっぷりだ。
あちらとこちらに分かれてしまっている「わたし」と「あなた」。それらは一瞬絡んできらめいて、あっという間に離れて霞んでいく。でもそれをもう一度結びたい、つなぎたい。永遠の普遍のテーマ。
その一方で、全ては永遠でなく、いつかどこかでキッパリ別れを告げることになる、その運命を受け入れること。それも永遠の普遍のテーマ。
その二つを見つめること、大事にすること、それが「物語」という存在の核。
そんな大事なことを、高精細・最高密度のアニメーションで届けてくれた。感謝しかない。
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