幽斎

レンフィールドの幽斎のレビュー・感想・評価

レンフィールド(2023年製作の映画)
3.6
ホラーの老舗Universalが、名優Nicolas Cageを迎え現代の闇に巣食う問題を古典を通して描く、エンタメ寄りのホラー・アンサンブル。AmazonPrimeで鑑賞。

Hollywoodメジャーには得手不得手が有るが、ホラーと言えばユニバーサル。世界で最もリメイクされた映画と云えば、1931年「Dracula」魔人ドラキュラ、Bela Lugosiの素晴らしい演技のドラキュラ伯爵は、現在でもマスターピース。原作は1897年「Dracula」ゴシック・ホラーの巨匠Bram Stoker著。30以上映画化されギネス認定級。原作は貴族と平民の格差を映すが、神格化された伝説は実在せず、モデルのヴラド家の居城トランシルバニアでも、吸血鬼は確認されてない。私はEXクリスチャンですが、日本ではドラキュラとキリスト教を関連付ける方が多いが、サタンでは無いので一言添えたい。

ユニバーサルは「小さく当ててコツコツと」アメリカでは珍しい身の丈に合った健全経営の会社。Universal Studiosが正式な会社名だが、COMCASTに属する世界最大級のメディア・コングロマリットの一部門。倹約を旨とする彼らがディズニー「アベンジャーズ」、ソニー・ピクチャーズ「スパイダーマン」、ワーナー・ブラザース「スーパーマン/バットマン」を見て「ウチにもネタは沢山有るゾ」珍しく色気を出して「Dark Universe」発表。隣の芝生は青く見えたのかなぁ(笑)。

第一弾「ミイラ再生」リブートしたTom Cruise主演「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」。興行成績は以前のリメイク「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」下回る惨憺たる結果で社長の引責辞任に発展、第二弾は「魔人ドラキュラ」リブートしたLuke Evans主演「ドラキュラZERO」見切り発車で公開、第三弾1933年「透明人間」リブートしたJohnny Depp主演は中止。「フランケンシュタインの花嫁」「大アマゾンの半魚人」「オペラの怪人」「ノートルダムのせむし男」全てボツ。「SAW」Leigh Whannelがレビュー済「透明人間」モダン・スリラーに蘇らせ大ヒットは記憶に新しい。本作はカウントするのもアホクサイので、恒例のシリーズ時系列を省略した「魔人ドラキュラ」何度目かのリブート。

COVIDが収束し未練がましいユニバーサルは「Dark Universe」不死鳥の様に復活(大丈夫かいな(笑)。「透明人間」成功させたWhannelが「The Wolfman」狼男。Elizabeth Banks主演「The Invisible Woman」女性版透明人間。Javier Bardem主演「Bride of Frankenstein」フランケンシュタインの花嫁。日系Karyn K. Kusama監督の正統派「Dracula」魔人ドラキュラ等、嫌な予感しかしないけど。※追記有り。

Kusama監督の「Dracula」差別化する為「The Walking Dead」原作者Robert Kirkmanが本作の為に書き下ろし。パロディをフィールドとする作家で、本作のテイストには最適。原作「吸血鬼ドラキュラ」登場人物から、セワードが院長を務める精神病院の患者レンフィールドを主人公に選択。Whannelが男女格差、富裕層と貧困層の格差社会を「透明人間で見える化」した秀逸なコンセプトを真似て(笑)、心理的虐待の可視化に挑戦。

ドラキュラと言う分かり易いアイコンを通し、心理的虐待の怖さを重ねる事で、現代社会に警鐘を鳴らす手段として、コミック調で笑えるけど、訴えたい事はしっかり伝えるコンセプチュアル。笑いのツボを押さえて観客にもストレス発散して貰う、割と高等戦術な描き方。原作のドラキュラは派手な血糊とは無縁の生々しさが秀逸なのだが、本作はサービス精神旺盛「Dark Universe」先陣としてゴア描写もド派手に描く。

皆さんは「GasLighting」聞いた事が有るだろうか?。ミステリーの世界ではガスライティング・テクノロジーと言いますが、相手を混乱させ己の意志を疑わせる心理的虐待。自分の記憶に疑念を抱くように仕向け、支配しようとする行為。一見するとサイコパスの得意技に見えますが、コレを用いた事件は日本でも増加傾向。具体的な手法を指南するつもりは有りませんが、無視、除外、威圧、否定、軽視と言う無形の圧力を加え、相手が依存して服従する様に仕向ける。貴方が女性だとして「あの人って私が居ないとダメなのよ~」と思ったら、遠慮なく私に相談して下さい(笑)。

Nicolas Cageと言えば、レビュー済「PIG ピッグ」オスカー俳優を存分に知ら占める一方、どんなクソ映画でも借金返済の為に出演する様に見えるが、一点だけ彼が譲らないのが「俺が主役」。しかし、本作のタイトルロールはレビュー済「ザ・メニュー」Nicholas Hoult。Cageの役は別の俳優が呼ばれたが「俺は伝説的な人物を演じる事が生涯の夢なんだ」Bela LugosiやChristopher Leeを参考に出演を熱望。実はニコケイがハリウッド映画に復帰するのはソニー・ピクチャーズ「ゴーストライダー2」以来。「PIG ピッグ」熱演が疎遠だったメジャー・スタジオも動かした。次はアカデミー賞復帰も夢ではない。

監督は「魔人ドラキュラ」続編と胸を張るが、寧ろユニバーサルお墨付きのパロディが正しい。魔人ドラキュラの本物を使いニコケイとホルトを合成するのは「Dark Universe」基本かも知れない。ニコケイもパロディと理解して、一生懸命でギャグにしか見えないけど、手を抜かない演技力は流石だと思う。イケメンのホルトをヒーローに置き換え、観客は何時の間にかレンフィールドを応援する。分かる人には解りますが、コレも立派なガスライティングの手法だと貴方は気付きましたか?。

残念なのはポリコレ〇出しのAwkwafinaの起用法。彼女を通してホルトがヒール→ヒーローへの成長を深めたなら、パロディが嫌いな私も高く評価出来た。エクスキューズは本作が吸血鬼と血の契約で支配された下僕、心理的虐待の被害者グループ、ギャングと警察官の復讐、欲張って3つのシークエンスで構成されるが、寧ろ脚本が雑に見えて3つの何れも薄く感じ、人物描写も未整理で感情移入も難しい。ドラキュラのパロディと言う二番煎じだけでは流石に説得力にも乏しい。私には中折れの未来しか見えないけど、Dark Universeに幸アレ!(笑)。

物凄くクソでも無いが物凄く面白い訳でも無い、パロディがお好きなら観てソンは無い。

※「Dark Universe」第二弾「Abigail」。1936年「女ドラキュラ」リブートだが、当初の企画より変則的なアレンジに変わったが、北米初登場2位と微妙な成績。チラッと見たけどレビュー済「M3GAN」っぽいのが、日本でどう評価されるのか注目したい。
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