daisukeooka

RRRのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.8
量と濃さが質を生む。「バーフバリ」のチームが再結集、キャッチコピーが「友情が使命か」と来れば観るしかない。SNSで十数頭の猛獣が束になって主人公らしき男と一緒に飛び出してくるワンカットを観てからは全ての事前情報をシャットアウトした。全部を知らずに驚きたかった…。

けれどもちろん観る。動物好きなパートナーに「動物がいっぱい出てくるモフモフ大冒険映画」だと言って連れて行こうとしたが、近々で「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を観て結構ヘトヘトになっていたので、騙して3時間超の超濃厚なインド映画に連れ込んだら夫婦仲に響きかねない。結局「無理せんで良いよ」と伝え、一人で映画館に行ったのだ。

時間をズラして真ん中の席を取った映画館は案の定満席に。見も知らぬ隣のお客さんとはイチイチ笑いのツボが同じで、両方とも構わずに同じところで爆笑し、同じところで拳を上げていた。観終わって思った「やっぱり連れてきて二人で一緒に観たほうが良かったんじゃないか?!」パンフのイントロダクションは「パワーチャージ・ムービー」つまり「観たら元気になる映画」と謳っていた。そもそも常にまあまあ元気なおれみたいな人間は平気で観られるとして、たまに疲れる妙齢の女性たちはこの映画を観てどう反応するだろうか。

いや、決して男性だけに向けた映画ではないと思う。主要人物たちの感情は極めて普遍的なモノだと思うのだ。そしてこんな映画こそ大人数で大スクリーンを前に大音響で観るのが良い。一人で迎え撃つのはもったいない。一人一人が映画に反応して震える、その震えを何百人分束にしてスクリーンに向けてぶつけ合うのが正しい観方なんじゃないか。

アクションひとつひとつ、殺陣の一撃一撃が丁寧で粘っこくて重くて速い。そして「このアクションをやるためにこの物語を作ったんだろう!」と勘ぐりたくなるような仕掛け。忘れた頃に炸裂する「猛獣アタック」、クライマックスの「合体脱出」はウルトラマンエースもバロム1もビックリ、そして「ラーマ神の降臨」は化身と言うより「ほぼ本人」が出てきてる。笑ってしまうような思い付きを大真面目にアクションとして最後まで作り抜く仕事に感服するしかない。

それにしても「宗主国の圧政を克服して独立を勝ち取った」過去を高らかに謳える歴史認識があるってのは羨ましい。不謹慎かもしれないが、ドラマチックなエンタメ活劇に大事な「魂揺るがす感情」はそんな背景のあるところで際立つからだ。いろんな見方がある中で、こういうエンタメを振り切って出してくる肚の座り具合は見上げたもんだと思う。そして羨ましいのは全編に溢れる「ビート」だ。ナーティダンスに象徴される生命の鼓動だ。エスニシティだ。日本の伝統文化の中にあの「ビート」があるか?

観た後に来るのは爽快感と、一歩遅れてやってくる悔しさだ。エネルギー量が圧倒的に違う。スタッフや役者が一人でおれなんかの数十倍の密度の仕事をやってのけていて、それが何千人も束になってこの映画を作っているんだと感じる。人も金もどんどん減りつつある日本はどうするんだ。日本映画はどうするんだ。おれはどうするんだ。どうやって追いつけばいいんだ。むちゃくちゃに駆り立てられる。
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