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時をかける愛のsoopenのレビュー・感想・評価

時をかける愛(2018年製作のドラマ)
4.8
2周しました。
不出来ながら年表を作り、壮大なロマンスの謎解きを、時空を超えたその仕掛けを、どうしても理解したくて、丹念に見直しました。見逃した部分を何度も発見し、何気なく置かれた伏線が、ここで生きてくるのか!と感心しきりでとても楽しかったです。
過去視聴したタイムスリップミステリーロマンスの中では、最も複雑で、脚本も音楽も秀逸、この時代の台湾に恐らく無理なく溶け込んでいただろう本作に、切なさ満載の感無量で2度目の最終回を見終えて、韓国版は見なくてもいいかな、という程ロス気味です。

2019年、27歳のユーシュエンは、2年前に大学時代からの恋人を飛行機事故で亡くし(行方不明)立ち直れないでいる。出会いの時点から自然に寄り添ってくれて、確信を持って自分に好意を打ち明け、何もかも自分のことを知っているかのように優しく完璧な恋人だったチュエンション…
容赦なく過ぎゆく現実にチラつくチュエンションの影。
送り主の分からない誕生日ケーキ。カセットテープ入りウォークマン…違和感を抱きながらも、ウォークマンを手にしたユーシュエンが、通勤帰りのバスの中で、ウーバイのラストダンスという曲を聴き始める。それが全ての始まりだった。ユーシュエンは1988年の自分とそっくり同じ顔の高校生、ユンルーの体に意識が入り込んでいたのだった。そこには、夢にまで見た愛しい恋人、チュエンションと瓜二つのズーウェイという高校生がいた。ユーシュエンとチュエンション、ユンルーとリーズウェイ、この4人+リーズウェイの親友のジュンジェが織りなす、時空を行ったり来たりするドラマ。

最終回までどうなるのか分からず、ドキドキしながら見られた作品はあまりないので、脚本の緻密な設計と、監督の演出と、キャストの演技力のお陰かなと思います。

ユーシュエン/ユンルーを演じるアリスクーは、驚く程の美人ではないけれど、見ているうちに、その表情の多彩さにどんどん引き込まれました。チュエンション/リーズウェイを演じるグレッグハンも、最初は地味だな…と思っていたのに、大人役と子供役の使い分けが見事で、繊細な表現や、切ない表情にも気持ちを持っていかれて、この役はこの人でなければダメだな、とまで思わされました。

また、音楽が耳に残る曲ばかりで、OPとEDを見ているだけで、ネタバレじゃないのかと思うほどの、このドラマの根幹を語り尽くす勢いの歌詞と映像に、見る度に刺激を受け、キーとなるウーバイのラストダンスは、中毒性があり過ぎて、見終わってからも長らく脳内リフレインしていました。

これは未見の方には、是非全くネタバレなしで視聴していただきたいです。でも、これはレビューなので、ネタバレにも触れたい!
ということで以下、ネタバレ含みます!!















まず、音楽ですが、この意味ありげなOPは、2人を繋ぐ象徴的なアイテム(トンネル=タイムスリップ?プール=チュエンションの死?時計やウォークマンの水没など)が多数登場し、リーズウェイとユーシュエンはモノクロとカラーの世界に分けられていたり、高校生が大人になったり、とまるでメビウスの輪に閉じ込められたかのような、2人の運命を表していて、最後にどうなるのか分からないよ、と言われている。
それに比べEDは、ハッピーエンドを約束するかのような終わり方で、どちらも軽いポップスなのに、映像が入ると切なさが倍増する。

このドラマでややこしかったのは、チュエンションとリーズウェイの関係でした。行ったり来たりするリーズウェイを、これはどの時点のリーズウェイ?リーズウェイinチュエンション?それともずっとリーズウェイ⁇とかなり難しかったです。足を引き摺るリーズウェイが、15年もの間調べてきた黒板の年表、自分が読めたら!と何度思ったことか。

一つだけどうしても納得出来なかったのが、ジュンジェの取った行動。ユンルーの自殺(転落死)を止まらせようと必死の説得にも関わらず、結局あなたは自分が助けられたから、誰かを救いたいだけの自己満だ、とユンルーに言われて、目の前で自死される、という悲しい展開の末、警察に誤解されて犯人扱い。言い訳もせず殺人犯となり、9年もの服役の末に出所。その後ハルモニの死を見届けた後の自殺…!ここまでジュンジェを不幸に陥れる理由はある⁈
確かにその方が脚本上ドラマティックですが、ユンルーの死を自分で背負わなければならない、という思考には無理があると思いました。

タイムスリップものには、同じ時間軸を旅するものと、並行世界の存在を認めるものとありますが、これは一応同じ時間軸なのかなぁ。だとすると、最後にみんなにとって幸せな世界を作る為に、消えていった、何人ものリーズウェイや、未来が変わってしまっても、悪夢は消える、と言って過去のユンルーを救って、自分は消えたユーシュエン…彼らの生き様は、誰の記憶にも残らず、無かったことにされる。無…それがすごく悲しかったです。例え彼らの魂の一つが生き残って、無事に明るい未来で愛を育むことになったとしても、それはもう私達が知っている彼らではない(トッケビ症候群ですね!)、と思うと、単純にハッピーエンドを喜ぶ気持ちにはなれず…
とはいえ現状を打開出来たのは素晴らしかったし、感動もしました。
最後にユーシュエンがユンルーに語りかけた言葉が心に残ります。
「誰かに気にかけてもらえるのは、当たり前ではない。それが家族であっても友達であっても、貴重な存在だから大切にすべきだ」
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