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愛していると言ってくれのsoopenのレビュー・感想・評価

愛していると言ってくれ(2023年製作のドラマ)
3.8
余韻。
あらゆるシーンで余韻が残る不思議な時間の流れを体感出来るドラマでした。夜に見るとうっかり船を漕ぐこともしばしば…
恐らく睡眠を誘う心地良い周波数でも出ていて、副交感神経が優位に…いえいえ、とても癒し系の繊細な優しいドラマでした。

聴覚障害のある画家、チャジヌ(チョンウソン)と、売れない俳優志望のチョンモウン(シンヒョンビン)が済州島で知り合う。ソウルに戻り、モウンのアルバイト先であるアートセンターで再会する2人。モウンはゆっくり、じっくり人の目を見て、意思を読み取ろうとするチャジヌの存在に、喧騒しかない世の中に疲れていた自分が癒やされていくのを感じ、急速に惹かれていく。手話も勉強し、ジヌの世界に触れようと、積極的にアプローチ。ジヌは過去のトラウマから、人との距離を詰めることに慎重になっていたが、モウンの誠実な態度と言葉に、少しずつ応えていく…そこへかつてのトラウマ相手が新しいセンター長として着任する。ジヌの生い立ちや過去を含めて、モウンに重くのしかかる2人の”違い”は障害となるのか?乗り越えて愛を昇華していくのか…

静謐な世界に、手話とスマホの音声変換アプリと紙を駆使して、ゆっくりと理解を深めて、愛を育んでいく2人が、とても愛おしく感じられ、同時にもどかしくもありました。ジヌの世界は雑音のない分、とてもシンプル。美しいものや優しいものに神経を集中出来る。逆にモウン(健常者)の世界には音が溢れていて、気が散ることが多い。意思の疎通に時間がかかり過ぎる、文字では伝わらないこともある、タイミングがずれる…手話の上手なジヌの親友や、元カノと比べると、自分は…
互いの世界を最初から理解している相手と一緒にいる方がどれだけ楽だろうか。でもそこを乗り越えてまで欲する人がいる、その気持ちを諦めないで欲しい。

ジヌの周りには、聴覚障害者の教え子達や親友夫婦が、ジヌを温かく迎え入れ支えてくれている。同時にモウンの周りにも、音楽業界でプロデューサー兼作曲家として活躍する、親友のユンジョハン(イジェギュン)や、部屋をシェアする相棒のオジユ(パクジンジュ)がいて、悪人が1人もいない優しい人ばかり。特にユンジョハンがモウンに捧げたとしか思えないような曲を聴かせるシーンは、美しく切なくなるような、音楽と歌詞に胸がいっぱいになりました。
モウンの両親も恋愛に頭から反対するような、モンスターペアレンツではなく、その辺が日本風なのかな…原作を知らないので、比べられないのですが、チョンウソンが原作を見て、感銘を受けて、13年前に版権を買ったらしいので、原作ファンにも分かるようなリスペクトシーンがあったのでしょうか。いつもの韓国ドラマとは違うなぁ、と新鮮に感じました。
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