Oto

MotherのOtoのレビュー・感想・評価

Mother(2010年製作のドラマ)
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坂元裕二はハズレがないから、逆に代表作がない脚本家だな…。『ベイビーブローカー』より10年以上も前に赤ちゃんポストやネグレクトを扱う作品を書いているとは知らず、『怪物』での是枝さんとのタッグも必然に思った。

初見だけど芦田愛菜ちゃんまじの天才で、やしろ優の物真似しか観たことがない歪んだ認知をしてたけど、本物ここまですげえのかって感動する。「傷つけられてもあえておどけてみせる」という感情表現のストックをなぜ6歳で持ってるのか…ブラッシュアップライフで言うと人生5周目超えてるはず。

己のトラウマや悩みと向き合うという意味では、作家ってドMだけど、今作観てると「よくこんなに主人公を苦しめる展開が書けるな…」と感じて、むしろ超ドSのような気がしてきた。
自分なら綾野剛とか山本耕史みたいなヴィランは辛すぎて書けないと思うし、一方でつぐみのことを探す漁師さんみたいな善意の人のためにあるドラマにも思うから、バランス感覚すごすぎて、どんな精神状態で書いてるのか想像し難い。

プロフェッショナルで、「一度テレビから離れて、娘ができたことで弁当を毎朝作るようになったのが自分にとっての転機」という話をしてたけど、そもそも才能がある人間がコツコツ続けると無敵になるんだな…。

好きな台詞は「(一番好きなものは)無口な子供」「捨てられたんじゃない、あなたが捨てるのよ」。松雪泰子に自分が重ねられるのが観やすさの理由で、「別に私は…」って言い続けてる人間が、見捨てられないと思うに至るまでの心情の変化が丁寧に描かれてて抜け目ない。

渡り鳥というモチーフとか安直にも感じるけど、坂元作品はキャラクターの名前がチャーミングなのもあって愛せてしまう。元々は三姉妹の話だったらしいけど、長女にフォーカスしたプロデューサーも英断だな…。
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