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ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン4のOtoのレビュー・感想・評価

3.8
数ヶ月かけてじっくり観た。もちろん面白いんだけど、Season1-2のように「止められなくなる」面白さというよりは、意を決して2時間に挑むという感じで、より映画的になっていると感じる。

「スティーンブンキング原作」と言っても過言でない今作の、最後に読まれるのが『タリスマン』。現実の世界で病気の母を助けるために、裏の世界へ行くという設定ですごく影響を感じるけど、サンプリング的にオマージュを公言する時代になったことを実感した。Netflixで映像化が決まって、ダファー兄弟が総監督をやるそう。

ep1
ナードとジョックの分断。ナードに優しい作品という認識だったので、マイクもエルもかなり逆境にいて今までにない印象。『スーパーバッド』を連想する。直接的なイジメ描写も多くて、個人的にはそれがホラーよりキツい。魔力も無くなっていて救いがない。

改めて、設定や企画ではなく、キャラとイースターエッグを楽しむ作品だなぁと。学園モノとホラーSFという組合せこそ新しいけど、表現自体はどこかで見たようなものが多いし、毎シリーズ序盤は説明に割かれがちで退屈してしまう。
今回も1時間以上かけて、高校に馴染めないエルとその過去、マックスの兄の死へのPTSD、ホッパーからの手紙、新キャラエディとマイクの交流、という整理がされただけにも見える。

盛り上げ演出としてクロスカッティング多用してる(ジョナサンカップル、ゲームとバスケなど)けど、そんな事するくらいなら尺をコンパクトにして早く本題に入ってほしいなと思ってしまった。

最後がようやくスタート地点で、関節逆向きは『女優霊』のオマージュかな…。『AKIRA』や『デスノート』からも影響を受けているらしいけど、Jホラーまで取り入れていてさすが。オタクがオタクを描いてるのがやっぱり醍醐味。

ep2
大きなミッションは3つ。
・ダスティン組(マックス…)→誤解をしている世間やジョックたちからエディを守りヴェクナの呪いの真相を解き明かす
・ジョイス組(マレー…)→ロシアに囚われたホッパーを救い出す
・マイク組(ウィル…)→イジメにあって暴走するエルを過去も含めて守る

他にも真相を別方向から探るナンシー、進路について悩むジョナサンなど、多くの物語が展開し始めて面白くなってきた。

エディの冤罪をマックスが目撃していて…しかもマイクたちがカリフォルニアにいるのでダスティンと協力して…という自然な流れで、ペアを成立させながら群像劇が進むという巧い流れ。
レンタル履歴から住所を特定するのは、少し無理があるとはいえ、あんまり見たことのない手法で感心した。

宮崎勤事件など日本でも騒がれた「オタク文化の悪影響」という偏見とオタクが戦う話へとスイッチしてきて熱い。これはダファー兄弟だからこそ作る必要がある物語。ジョックの中にルーカスがいるのも上手。

この時代にロシアを直接的に悪として描くの善し悪しがありそうだけど、前シリーズでは社会がこんなことになるなんて想像もしてなかったし、前述のことも含めて社会と接着してるドラマだ。

ep3
上記のミッションが進行。エルが被疑者として疑われる展開はそこまで膨らまさずに、サム博士が引き取る。長かった悩みの時期を抜けて、彼女自身の決断でヒーローへと変わっていく段階。

加害者側になる方が意外と辛いのかもしれないと感じた。どうしていじめのことを伝えないんだろうというもどかしさがあるけど、過去のトラウマから自分が怪物かもしれないという葛藤を抱えているからなんだな。実際の凶悪事件でも加害側の家族が悲惨なその後を迎えている事例は多い。

人間のシリアルキラーと同様に、被害者に共通点を作るという法則性が斬新。マックスが当事者だとわかる展開など、全体的にダークなトーンに思う。果たしてルーカスの真意は…そしてダスティン組はエディをどう守るのか。

ストレンジャーシングスの省略の仕方って定型がある気がしてそれが上手い。エルの決断シーンは映さない、警察がクリッシーの彼氏に真相を伝えるシーンも映さないなど。

ep4
大目標は変わらぬまま、ミッションがスムーズにスイッチしていく。ヴィクターから手がかりを引き出すナンシー組、ピザ車で脱走するマイク組、マックスを救うダスティン組。

吉田監督が「9割の絶望と1割の希望」と言ってたり、ワイルダーが「主人公を最悪の状況に追い込め」と言ってるけど、とことん悲劇。やっと逃げられたホッパーは再度捕まるどころか、協力者たちまで捕らわれてなす術なし。マックスもビリーの死後は苦悩しかない。

でもそんな中で「音楽」がパワーになってギリギリのサバイブ。一貫してナード讃歌な作品でやっぱり愛せる。
目の前に人がいるのにSNSやフィクションの存在とばかり対話してしまうのは、現代人にもかけられた呪いで刺さる。

悪夢的な別世界のVFX表現も圧巻で、マックスの疾走といい、ヴィクターの回想といい、見惚れてしまう。どこかアリアスター的な世界観。

ep5
毎エピソードが長編並みの尺なのと、群像劇で流れが遮断されるので、持続力がなくて数週間鑑賞が停滞してしまった…。

・ニーナの番号に辿り着くマイクたち。
・ホッパーの家族を守れないトラウマ。
・ヴェクナの居場所を突き止めるダスティンたち。
・飛行機から空手で脱出に成功するジョイスたち。
・追い詰められるエディの前で青年が空中死。
・エルは力を取り戻す兆し、パパと協力。

さすがに同時進行するには話が拡散しすぎてない…?と思う。全てのパーツはヴェクナに通じるにしても、あまりにバラバラすぎる。

エルは怒りが根源なんだな。
ウェルベック「人は人生を愛しているときには読書はしない。それに、映画館にだってほとんど行かない。何と言われようとも、芸術の世界への入り口は多かれ少なかれ、人生に少しばかりうんざりしている人たちのために用意されているのである。」を思い出した。

ep6
警察vs遺族自警団、どちらの正義も誤っているという構図。
コアの悪役が見えないことで、ヒーローたちほど苦境に追い詰められ、疑いをかけられるということをずっとやっている。

電磁場を見つけるダスティン、ネット前夜に位置を特定する少女、ナードのかっこよさを存分に描いてるのも良い。

炎でデモゴルゴンに挑むホッパー、自らの罪を疑うエル、ダスティンに忍び寄る警察、たどり着くジョイスたち、位置を特定するマイクたち、その不在に気づく家族…。少しずつ収束に向かっている。

裏側の世界でパーティーが組まれるのは今までなかったので新鮮。ナンシーがスティーブに持ってかれそう。

飛行機の墜落どうやって撮ったんだろう…。俯瞰のボートもかっこいい。
ロードオブザリングは早く観た方がいいな…。

ep7
やっぱりストレンジャーシングスは「再会」の物語だな。
長い苦境のときを経て、仲間同士が再集結する熱さ。

群像劇だけど、各シーンの感情が一致しているから見やすい。
調子がいい時はみんな調子良くて、ホッパーとの再会と、裏側の世界との合流、エルの脱走、を同じタイミングに持ってきている。重力反転の描写も面白い。

そして遂に明かされるヴェクナの正体。腕の001で確信させるのそれしかないなという感じ。ついに終わってしまうな。

ep8
戦闘準備回かと思ったら、最後に名シーン。ヘリコプター操るのかっこいいし、今まで停滞していたマイクたちがついに再会。

パパは「毒親」だったんだな〜正義を押しつけるタイプのエゴイストだったので、最後に「わかった」と返さなかったエルにあっぱれだった。

なぜナンシーに音楽を聴かせないんだ?は気になった。

ep9
よくこうも毎話クリエイティブな解法を思いつくな。心理バトル、戻って特攻大作戦、ピザとメタル。

ロシア人同士だからできる焚きつけも素晴らしい伏線回収だし、スティーブもついに本音を言っちゃったし、ウィル兄弟の話し合いもあるし、みんなが話したかった人と話す回だった。

ピザのゴーグルのようなユーモアが好き。

ep10
エディのくだりとか良いんだけど、全体的にまぁそうなるよねという感じはあって、感動の閾値は超えてこなかった。

なんかわからんけど、一番感動したのはマレーが炎をぶっ放すシーン。こうやって影から自分を助けてくれている人がいるんだなってことを思ったのかもしれない。

ダスティンとエディ父の会話も素晴らしかったな、こんなセリフが書きたい。「みんなにも知ってほしかった、本当のエディを。絶対好きになる」「この街を守るために戦って死にました、自分を嫌ってたこの街を」「無実なだけじゃない、英雄です」。What to sayはみんなわかるんだけど、この伝え方できる人いないでしょう。

サスペンスミスリードからのエルの「開けておいたよ、ドアを7cm」も素晴らしかった。結局シーズン5に託す形になってこれがクリフハンガーのつらいところだけど、完結に向けていよいよ高まってきた。
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