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生きとし生けるもののmanamiのレビュー・感想・評価

生きとし生けるもの(2024年製作のドラマ)
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医師の佐倉(妻夫木聡)がバーで「焚き火の偽物」を見ている、その冒頭のシーンで『Solace』が流れる。その曲がラストにも使われるんだけど、せっかく最初がレコードだったんだから、最後ももうちょっと何か気の利いた形で聞かせてほしかったなぁ。
音楽は大友良英。その他のシーンでもBGMが場面にそぐわない陽気さだったり、背景音だけで十分なのにやかましかったりするのが、ところどころ耳障りだった。
結局どうしてメスを握れなくなったのかも謎だし、セリフもなんかちょっと独自性がないというか。良い場面で良いこと言ってるんだけど、本当にただただ「良い言葉」なだけで、どこかで聞いたことあるようなものが多かった印象。余命ものにはどうしても、「この状況でしか出てこない名言」を期待しちゃうからかな、期待しすぎちゃったかな。
そんな中で心に残ったのは「生きる権利があるなら死ぬ権利もあるだろ、いや、生きるのは義務か」ってのくらいだろうか。
あと、外で食べる肉が美味いっていうのには著しく共感。「おいしい」よりも「美味い」がしっくりくるよね、あれは。夏になったら今年もまたビアガーデンに行こうと、謎の決意を固めた所存。
そして、余命僅かってそういう楽しみな予定も立てられないってことなんだよなぁと、当たり前のことながら、なんだか寂しくなってみたり。
佐倉と成瀬(渡辺謙)のバディは素敵だったな。「おっさん」「ぼーや先生」と呼び合いながら、人生にケリをつけていくかのように、旅をする。医者と患者という枠を大きくはみ出して、かと言って友情というわけでもなく、もちろん家族とも違う、二人だけの関係性が「この世は美しい」に生命力と説得力を与えていた。
ずっとクールでドライだったのに、土壇場で取り乱してワガママ言ってすがる姿には、多くの人を見送ってきた彼だからこその揺らぎがあって、「いのち」を感じられるシーンだった。
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