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沈黙の艦隊 シーズン 1 ~東京湾大海戦~のmanamiのレビュー・感想・評価

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原作はバブル景気真っ只中の頃に描かれたが、今作では設定を現代に移しているため、特に世界情勢などはツッコミどころが多い。しかしアメリカへの一極集中が背景として存在しないことには成立しえない話のため、正確な時代設定をすると違う展開にせざるを得ないだろうし。時事問題を扱った原作ものの難しいところよね。
それでもやはり、響いてくるものは多い。核と平和。戦後すら知らない世代の私でも、きっとさらに下の世代でも、この国にいる限りそれを結びつけずに考えることは難しい。抑止力とは、誰の、何を抑止する「力」なのか。「傘」の下にいるのは誰なのか。改めて突きつけられる、しかも目の前に、鋭く。
「世界は悲しみにあふれている」正義と敵対するものが必ずしも悪ではない。「正義は勝つ」なんて言葉もあるけど、いったい何に勝つというのか。
平和を追求するあまり前代未聞の行動を起こす海江田。演じる大沢たかおは、まさに「渾身」というに相応しい、クールな役どころでありながら文句なしの熱演。プロデュースにも名を連ねる。
海江田が「やまと」をトップダウン方式で率いるのに対し、チームワークで動くのは深町を艦長とする「たつなみ」で、この対比、対立、そして絆の描き方にも唸らされる。
米軍含め、海中・海上での人間模様がよくできているのに比べて、日本政府やその周辺の人物に、引っかかる点が多い。
その筆頭は海原で、公の場での一人称が「俺」だったり、総理大臣との会話で「準備OKです」とか、自分の父親のことを「親父」と称したりだとか、さすがに無理あるよ。原作がそうだったのかもしれないけど。漫画なら「そういうキャラ」としてありでも、生身の人間が、七三の江口あんちゃんが、よりによって内閣官房長官としてそれをやっちゃったら、いきなり超ド級の嘘くささだわ。制作過程で誰も異を唱えなかったんだろうか。
首相の記者会見に集まった記者たちがおとなしすぎるのも、とてつもなく不自然。「質問はあとで」って言われてたのに、結局質問を許されないまま首相が会場を出ようとしている、そんなときに着席したままただザワついてるだけなんて、そんなバカな。
ジャーナリスト代表みたいに急に選ばれる上戸彩の役も、よく分からないしな。あの廊下で初対面だったっぽいし、そんなたいした質問をしたわけでもないのに、どうして国の行く末を左右するような役を任せたの?さすがに都合良すぎて冷めてしまうわ。
と、不満もいろいろ書いたけど、結局のところはすごく良かった!面白かったからこそ、残念な部分も心に残ってしまっただけでね。続編も観ますよ、間違いなく。
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