Oto

踊り場にてのOtoのレビュー・感想・評価

踊り場にて(2021年製作のドラマ)
4.0
『silent』の脚本家のヤンシナ大賞作品。放送時にみてFilmarksに登録がなかったのでメモっていた感想。

「諦めるとは、明らかになること。」
非常に具体的なメッセージがある、ぶれないストーリー。「踊り場にて」という一枚絵の時点で企画が成立している、見習いたいソリッドなアイデア。

夢番地の「僕が立っているここはきっと誰かの願ってる場所で 誰かが立っている場所がきっと僕の望む場所で」を思い出させる母親のセリフ「見えづらくなるだけなの」が好き。子供の時の夢を叶えるのは2割とあったけど、自分はコックさんとか発明家とか書いててある意味で叶えてる。

「明らかになっていないから、まだ羽生さんと将棋打ってないから」も好きだし、「趣味は、仕事にできなかった好きなこと」はドキッとした。自分もサラリーマンになっても諦めきれなくて続けていることがいろいろあるし、叶えられると思っているから毎日楽しく暮らせているところがある。

バレリーナを諦めた教師と、3人の生徒(バンドマン、バレーボール、恋愛を志す)との群像劇。主人公よりも、周りの成長が軸にあるけど、たとえほんの少しだとしても、誰かの心を動かすことができる仕事って素晴らしいし、それによって彼女が教師という仕事に誇りを持てるようになるという物語。

1番の見せ場が教壇でのセリフなので、映像的なヒキを作るのが難しいと思いきや、2択を選ぶバックショットとか、背景の「諦めなければ夢は叶う」で視覚的に面白いものになっているのが見事。
あとこれは明確な学びとしてあるのは、感動シーンでは絶対に遊びがあった方がいいということ。今作なら「将棋は打つじゃなくて、指すです」。『CODA』もそうだった。

中田さんは振り向く芝居がめちゃめちゃいいな、と『街の上で』を思い出しながら思った。今作では少し芝居が大きめなのが気になったけど、生徒は総じて芝居めちゃ上手いな...。

バレエの脚を特徴的に使っていたり、動きのあるドラマになっていることも成功要因として大きいと思った。展開的には少し無理矢理だけど、2度の頭の強打とかもアクションとして機能してる。
どうしてもセリフがメインになりがちなので、作家さんはバレエ経験がないと聞いたけど、リサーチでここまで立体的な描写ができるのすごいなと思う。『花とアリス』と『ミッドナイトスワン』が好きで選んだ職業とのこと。
https://note.com/ubukata_m/n/n049e11eb7d81

あと、面接官とかちょっと嫌な奴すぎない...?と思った。「それってバレエ的にはもうおばさんなの?」「才能がなくて諦めたってことね」まぁでもこれくらいは言う人いるのかな...自分だったらこの学校はやめておこうってなってしまいそう。だけどこれもnoteによると実話に近いんだな。

シーン2、シナリオの電車から屋外に舞台変更していて、リアリティ的には確かに車内の方がいいんだろうけど、ライティングとか考えても結果的にあちらの方が良い映像になっている気がして、製作部のクリエイティビティってあるよね〜って思った。『すばらしき世界』でもJRの許可が降りなくて、ホームが駅前に変更されていた。

シナリオ:https://www.fujitv.co.jp/young/scenario/33th_01.pdf
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