ヨーク

ヒルダの冒険 シーズン3のヨークのレビュー・感想・評価

ヒルダの冒険 シーズン3(2023年製作のアニメ)
4.6
『ヒルダの冒険』はシーズン1からずっと面白くて本当に素晴らしいアニメシリーズだったのだが、完結編たるこのシーズン3もめちゃくちゃ出来の良い作品であった。
1から全部別々に感想文を書くのは面倒なのでここに集約させていただくが、まず何と言ってもシーズン1の第1~2話が素晴らしい。もう掛け値なしと言ってもいいほどに出来の良い第1~2話で、これを見たときの、これはとんでもなく素敵なアニメだぞ! という胸の高まりは今でも忘れがたい。トロールとのやりとりからエルフの世界の認知、そこで描かれる世界の奥行きの深さはヒルダが家の玄関の前に立っているだけなのにとんでもない冒険が始まったように見えてしまうのだ。そして第2話のオチとそこからの展開がワクワクを加速させる…のだがこんな調子で細かく感想を書いていくと時間も文字数もいくらあっても足りない。
なのでまぁ、ざっくり言うと第1~2シーズンと長編の『ヒルダと山の王』は全てジュブナイル・ファンタジーとしてはS級の出来と言ってもいい超面白いアニメシリーズだったのであります。んで完結編として満を持して配信されたシーズン3なのだが、これもまた面白かった。
最初の数話を見て、ははーん…これはヒルダと同じくらいジョアンナ(ヒルダのママ)の物語だな? と思った俺の見立ては正しかった。シーズン3は完結編に相応しく、今まで不自然なほどに語られてこなかったヒルダのパパが遂に登場して、ママの物語がメイン級と言っていいほどに描かれてヒルダの出生の秘密にも迫るのである。何と最終話は77分という劇場版サイズのエピソードなので恐れ入る。
そこで描かれる冒険は血の物語であり、ファンタジックな空想でありながらも地に足の着いた成長の物語でもある。それはたった一つのシンプルな事実を思い出させてくれる。あらゆる意味で大人になれなかった子供はいるが、この世界でかつて子供ではなかった大人はいない、と。ヒルダは当然、ジョアンナもかつては子供だったしその親から見れば今でも子供に見えるかもしれない。そしていつかはヒルダも大人になるだろう。それは入れ子構造のようでもあり大きな円環を成しているような気もする。ちょうどシーズン1の第1~2話で描かれた人間とエルフと巨人の、それぞれ普段は意識の外にありながらも重なり合っている重層的な世界のように、だ。
この長編アニメの着地点がそこで本当に良かったと思う。世界は複雑で面倒くさいが、それ故に美しくて楽しい。かつて宮崎駿が「この世界は生きるに値するのだということを描きたい」と言ったことがこの『ヒルダの冒険』ではありありと描かれていると思う。高畑勲が存命ならばきっと激賞していたことだろう。
こりゃ面白いアニメでしたよ。長編ではあるが全部で3クールちょっとくらいの尺なので新しく見るにしてもそこまでハードルは高くないだろう。個人的にはネトフリに加入している人は全員見るべき、くらいに思いますね。ここ数年で最高レベルのアニメだったと思う。非常に面白かったです。
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