たくさんの素材を細かく刻んでごちゃまぜにして提供するチョップドサラダ的な演出。
これはオッペンハイマーという人物の人生の記憶をフラッシュバック的に観客に体感させようとするような狙いがあるのではないかと想像するのだが、３時間近い上映時間で物語に集中するたびに場面や時系列が細かく切り替わるのはかなりフラストレーションがたまるし、どう考えてもスムーズな物語の理解を阻害する作用の方が強いと思う。
いっそロバート・ダウニー・Jr演じるルイス・ストローズのパートを削ってオッペンハイマーの主観で統一したらもうちょっと話がすっきりする気がする。
肝心の内容に関しては賛否を云々するほどの踏み込んだ主張があるわけでもなく、極めて穏当な範囲のお話しで、オッペンハイマーという人物を今描くとしたらこのくらいになるだろうという所に落とし込まれている。
ただこの映画で描かれている内容はどこまで行ってもアメリカ国内の議論でしかなく、内輪の論理から一歩も外に出ないまま「世界を破壊した」などとうそぶくのは如何にもアメリカ的な夜郎自大精神でうんざりさせられるところでもある。
