小径

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版の小径のレビュー・感想・評価

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この映画がミュージカル映画なら、
彼女の人生は悲劇じゃない。
まだ2番目の曲だから。結末を見ないことで、物語は続いている。現実が終わりを告げようとも、カメラがフィナーレを予感させようとも、この映画の主人公は彼女だから、彼女の愛し、望んだ結末がこの映画の結末に相応しいような気がする。


彼女が主人公のミュージカル映画。そんなミュージカルの枠組みの''お約束''を採用するなら、これが絶望か、希望か、結末か結末じゃないかを考えること自体もナンセンスな気もしてくる。

彼女のいない場所で語られる彼女と、
非現実的な空想に耽ける彼女と。
現実の彼女はどこに有るだろうか。

全てが彼女であり、彼女でない。

現実は冷酷な重みを持つけれど、
彼女の本来の姿はそこにはない非現実。
非現実はあまりにも現実とかけ離れているけれど、そこには彼女の本心が原動力が熱がこれ以上になくとてもリアルに存在している。
その矛盾、不均衡が同時に存在することに絶望と魅惑を感じる。


物ごとのあらゆる両面がそのままずどんとのしかかる感覚。抽象的な無限さに重さを感じる。重い重すぎる
ただただ、圧倒的なこの映画のパワーにひれ伏す感覚に溺れて、衝撃的な映画体験をした。

暗闇の中の無限と、劇的な音楽と圧倒的な生命力を思いだして、その度にどきどきする。

凄かったです。凄かったです。
小径

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