ささきたかひろ

リコリス・ピザのささきたかひろのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
3.6
男なら誰しも年上の女性に憧れを抱いたことがあるはずだ。

まして自身に著しい精神的な成長があり周りの仲間が急に子供っぽく見えてくる思春期の出会いであるならば、なおさら年上の女性は魅力的に映るものである。

けれども年上の女性とお付き合いするということは単純に年齢差だけのお話ではなく、彼女の友達や聞いている音楽、漫画、映画、Tシャツの柄など疑いようもなく違う文化を受け入れることでもある。

カルチャー・ショック、そうそれは文化のぶつかり合いなのだ。

やけに生々しい話と思われるだろうが、お察しの通り実体験である。
故にこの作品を私情を抜きにして鑑賞することは叶わなかった。

ちなみに私の父親も年上の妻を娶り、客観的に見ても本人のキャパを超えた成果を上げたりしているのを見ると、男は年上の女性に対してはアホみたいに純粋で、認めてほしくて、褒めてほしくて頑張るものなのである。

二人の関係がうまく行っているときはこの上なく幸福な「文化の正面衝突」が起こり自分自身も非常に豊かになった気がする。しかし、一度関係がこじれてしまえば数日前には幸福だった文化の衝突も「ジェネレーションギャップ」と名を変え二人を諦めの境地へいざなう….。

ハリウッドの「そんなん知らないって」というレベルのエピソードが全編に散りばめられており、正直鑑賞後に調べないと楽しさが増えない映画というのは好みではないのだが、解説サイトサーフィンをしなくたって良い映画だと思います。

二人の心が豊かになって、誰かを豊かに、優しく包んであげても自分が干上がらなくなったとき人は本当に人を愛せるのだということを見せてくれた2時間ちょっと。見終わったときにはアラナが女神に見えた。

誕生日が10日しか違わないポール・トーマス・アンダーソン監督作品初鑑賞でした。
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