あんず

対峙のあんずのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.0
赦すって何だろう。真実って何だろう。観る人に静かに重く問いかけて来た。途中、かなり辛かったけれど、観て良かったと思える作品だった。

またいつもの記憶違いで、ドキュメンタリーと思って見始めて、だとしたら攻めすぎ、そんなわけないなと。でも、この密室劇にはドキュメンタリーのような予定調和でない緊張感とスリリングな展開があった。被害者の両親、加害者の両親、どちらも台詞を話しているという感じがしなかった。スゴい。

別に赦せなくてもいいんじゃないかと思う。赦そうとして余計に辛くなるくらいなら。横道に逸れるが、この類いのテーマの映画を観ると『シークレット・サンシャイン』を思い出す。それくらい、私に強烈な印象を残した傑作だった。

私には、恐らく一生赦せないだろうことがある。相手を理解して赦せば楽になるのかなと思って頑張ったこともあったけれど、赦す/赦さないは、思考ではなく感情な気がするから、コントロール出来なかった。自分の本心を押し殺そうとして余計に心を病んだ。最近は赦すことを手放す(どっちでもいいやって思う)ことは出来るのかもなっていう気はしている。

終盤、讃美歌の美しさに心を癒される場面がある。聴いていて私も癒された。クリスチャンではないけれど、昔から教会に行くと落ち着くし、ステンドグラスを眺めているのも好きだ。讃美歌や教会自体が美しくて感動するということもあるけれど、きっとそこに歌っている人々や作った人々の思いや祈りが込められているからなんだろう。

人間というのは結局のところ、感情を大切に、自分の気持ちに正直に生きることがもしかしたら、和解や平和への近道なのかもしれない。もちろん、相手の感情も否定せずに尊重して。それでも、どうしても理解できない言動をする他者がいることも事実。気の合う仲だって全てなど分かり合えるはずもない。そもそも人間は誰しも孤独。そのために自分の心とも相手ともきちんと対峙して対話することが大切なんだよな~。
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