あんず

波紋のあんずのネタバレレビュー・内容・結末

波紋(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「オーレ!」
もっと早く、心の赴くままに踊って叫べたら良かったのに。あんな変な踊りを踊っていないで。

枯山水の庭と家の中に買い溜められた大量の「緑命水」。人から見える庭と見えない家の中。人の外見と内面のよう。渇望している魂と、それを直視しないで隠そうとする脳と、水分がないと生きられない正直な体。不安定な状態を何とか保つかのように宗教にのめり込んでいる主婦依子を筒井真理子が熱演。初めて出演作を観たけれど、脇役の時より演技力が堪能出来ていいなと思った。

失踪した旦那が突然戻って来たことで、依子のバランスはますますおかしくなって行く、まるで波紋のように。それは徐々に広がり大きくなって行き、母から逃げるように九州へ行った息子も帰って来て事態はより悪化する。そして、依子は救いを求めてますます宗教にのめり込む。

依子の涙を見た時、心は完全にはおかしくなっていないんだなと安心した。パート先の清掃員(木野花が良い味を出していた)とやり取りする時、依子は至極真っ当だった。彼女との関わりは大きかった。彼女もまた孤独や渇望を抱えていたから、共感したんだろうな。

一体どうやって終わるのかなと思ったら……あり得ないようだけど、意外とあり得そう(あの場で踊るかは別として)。
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