ちょげみ

ウォンカとチョコレート工場のはじまりのちょげみのレビュー・感想・評価

4.2
《あらすじ》
小さい頃からの夢だったチョコレート職人の夢を叶えるため、一流の職人が集うチョコレートの街に向かったウォンカ。
しかし、魔法のチョコを生み出すことができるウォンカの才能と能力は、街を牛耳るチョコ職人達の恨みを買ってしまう。
チョコ職人と彼らと癒着している警察所長達の目をかいくぐり、ウォンカは一流のチョコ職人として大成することはできるのか。。。


《感想》
『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚という情報を耳にしていたのですが、その実この映画を支配しているのは楽しげでポップな雰囲気。

『チャーリーとチョコレート工場』ではダークでシニカルな雰囲気が基調となっていますが、この映画はそれと対をなすかのようにポップでスウィートな雰囲気が根底に流れています。


しかしこの作品はあまりにもスウィートが過ぎる。。。
この映画を満遍なく包み込むのはフルーティでカラフルな世界観、、、という言葉を全体的にミルクチョコレートでコーティングしてその上にパウダーシュガーを余すことなく振りかけるような、そんな甘味に溢れた、糖度40度、純度120%の世界が眼前で繰り広げられます。

特に甘さが際立っているのはミュージカルシーン。
突入後、一瞬にして眼前に展開されるのはカラフルで夢幻的な世界です。
ウォンカはプレーンのチョコではなく、様々な味がし、かつ食べたものを魔法にかけるチョコの開発に情熱を注いでいるのですが、ミュージカルシーンで現れるのはまさにウォンカの深層意識と言っても良い景色であると思います。
人々は楽しそうに笑っていてどこまでも自由であり、やる気に満ち満ちて人生に対して肯定的になれる、ウォンカが持つ夢をビジュアライズしたらまさにこのような世界になるのでしょう。
そして、ただ見ているだけの私たち観客も、さながらウォンカのチョコに魔法にかけられたように肯定的な気分を味わうことができます。

思えばこんな甘い映画を見たのは久しぶりな気がするな。。。


さて、ストーリーとしては典型的な勧善懲悪ものといって差し支えないと思います。
虐げられていたもの、弱い立場に甘んじているものが反旗を翻して街を牛耳っている街の有力者達に反抗し、そして最後には自由を手にする、というような映画の雛形的な、テンプレートなもの。

一面的なイメージで確立された悪役キャラ、予定調和的なエンディングはどこかディズニー映画を想起されます。
具体的に言うと、時代背景や舞台となる場所は違えど、ファンタジー、ミュージカル映画繋がりということで『アラジン(2019)』を思い起こす映画でありました。
今は落ち悩んでいるディズニー映画が猛威を奮っていた最盛期を連想させるような、神々しくて物々しい雰囲気をこの映画は纏っています。



総括すると、楽観的で社交的、極めて人当たりの良いふわふわとした性格(と甘いマスク)のウォンカを始めとする魅力的なキャラクター達、多幸感に満ち満ちたミュージカルシークエンス、コミックリリーフとして躍動するウンパルンパなどの要素がマリアージュを奏で、この映画を極上のポップコーンムービーに仕立て上げていました。

今年のトリを飾るにふさわしい、最高のエンターテインメント映画です。
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