ちょげみ

コカイン・ベアのちょげみのレビュー・感想・評価

コカイン・ベア(2023年製作の映画)
3.8
ジャンルで言えばモンスターパニック/ホラーコメディ映画と言うことになるのかな。

でもそれ以前にこの映画を見た時に誰もが抱く印象として"B級映画だなぁ"と言うことに尽きると思うのですが、驚いたことに本作はB級映画的でありながらA級映画?に勝るとも劣らない超エキサイティングな映画に仕上がっている、と自分は感じました。

別の言葉で言い換えるとB級映画という枠組みを最大限に利用して、ヒット映画に必要な制約に囚われないで作ってるというのかな。

それはまあよくわからないけれど、ともかく面白さとしてはモンスタパニックの中でも頭抜けているなぁと感じます。


ではどこがすごいのか?というと"群像劇形式のスタイルを採用していながら全く中弛みさせることなく視聴者の興味を最後の一瞬まで惹きつけている"、ということでしょうか。

本作はコカインを食べたクマが人を襲うというシンプルな構図を盛り上げるために群像劇を採用しているのですが、いかんせんこれがうまくハマりすぎていました。

登場人物一人一人がハリボテではない、血が通い肉体を持った人間としてありありとして映し出され、それが恐怖の対象であるクマと相対して尋常ではないスリリング感が演出されていたと言いますか。
恐怖で手元が狂い二次災害、三次災害と被害が拡大していく登場人物達を、文字通り手に汗握りながら見ていました。



で、さらに映画の中に表出している敵味方の構図?とその移り変わりがただのモンスターパニックではあらず、さながら超人気の少年漫画のような様相を呈していました。

一般的に、このような映画では"クマ"は敵側ですよね。
本作も終盤まではまごうことなく敵側に位置しているのですが、映画の序盤でさりげなく元々人間のミスによってコカインを吸引することになってしまった哀れな動物という被害者としての一面も描かれています。
つまりモンスターパニック映画の主役としての加害者としての一面もさることながら味方にもなりうり、かつ同情を誘う被害者としての一面も持っているという立体的な人物(クマ)として描かれています。

そしてこの構図というのは視聴者の神経をささくれだせる真の"悪役"の登場、さらにはヤク中のクマには子供がいたという母親としての側面を描くことによってひっくり返されます。
(母親としての顔があるというのはズルいですよねぇ。
「待ってくれ!家で子供が待っているんだ!」という悪役が撃たれそうになった時に使われる古典的なやり口だけど、それが元々庇護欲を誘われるクマに使われたとあっちゃあ打つてなしですよ。)

あら不思議、なんと今まで敵として立ちはだかっていたクマが味方陣営に加わり、敵を痛快なまでにぶっ飛ばす勧善懲悪映画に様変わりします。


そんなかんなで、視聴者を驚かせるサプライズもあり、群像劇も完成度が高く、最高にイカしたポップコーンムービーとして燦然と輝いていたかな。
劇場で2000円かけてB級映画を見るのはいささか損をした気分になるけども、家でコーラを鯨飲しポップコーンを喰らいながら見る映画としては最高です!!
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