ちょげみ

名探偵コナン から紅の恋歌のちょげみのレビュー・感想・評価

3.8
まずもって百人一首という題材が良いですね。

百人一首は百人の歌人の和歌を一首ずつ百首にまとめた歌集で、ジャンルは望郷歌、四季の風趣を愛でた歌、極めて技巧的な歌など多岐に渡るのだそう。
なかでも主流だったのは恋愛のことを歌った恋歌で、平安時代の男女は和歌を通して気持ちをとりかわしていたことは有名な話ですね。
いつでもどこでもノータイムで連絡を取れる現代とは違って、今の私たちから見たらいささか遅すぎる頻度で、しかも限られた様式でしか送れないという和歌。
しかしだからこそそこに内包される思いや願いというのが高密度で描かれている気がして、数千年前の彼ら/彼女らの恋模様の一瞬を切り取ったかのような歌を見ていると、人様のプライベートの恋愛を覗き見しているような背徳感にも似たなんとも言えない気持ちに苛まれてしまいます。


そんな百人一首のなかでも恋歌というのを題材にとったこともあって本作はミステリーというよりも恋愛映画の側面を強く帯びているように感じました。

これが新一と蘭の恋愛を描いたのであれば幾ばくかの場違い感は否めませんが、平次と和葉のいじらしい幼なじみコンビ、そこに平次の自称お嫁さんも含めた三角関係にフォーカスを当てているということもあって、京都という舞台にふさわしい粋な演出に富んだ物語として見事な完成度を誇っていたと思います。


相変わらずアクションは人間の限界を越えた超人達のスタントという様相を呈していましたがそれもご愛嬌。
ラストシーンのあり得ない空中ジャンプで喉から出る寸前だったツッコミも服部の(文字通り)の殺し文句で引っ込みました。
いや〜、あれは反則ですね。。。
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