ちょげみ

名探偵コナン 天国へのカウントダウンのちょげみのレビュー・感想・評価

3.9
"初期のコナン映画からしか摂取できない栄養がある"

試しに"コナン映画おすすめランキング"とググって見ると必ず上位にランキングしている、コナンファンからの評価が著しく高い本作ですが、公開から20年以上経った2024年現在から見渡してみても、胸を張って傑作と言えるような代物であることに違いはないでしょう。


まず、肝心要のストーリー。
軸となるのはツインタワービル関連のあれこれですが、並走するようにして進行している灰原愛の怪しげな動きや少年探偵団のこそこそが作品に厚みを加えていて、見応え抜群です。
それに高層ビルを舞台にする脱出系アクションの完成度の高さ、序盤に散らした小ネタの回収、思わず舌を巻く伏線回収の妙など、作品を賑わすハイレベルの演出がこれでもかと言うほど盛り込まれています。


ただまあ、そうはいってもこれだけなら他のコナン映画に大差をつけるほど優れているとは言えないでしょう。
なにせ、ここ最近のコナン映画はモンスターコンテンツと化したこともあって時間とお金と人材を惜しみもなく投下し、極めて満足度の高い作品を生み出しているわけですから。

では一体何故本作は数多いるコナンファンを今現代においても魅了し続けているのか?


端的に言いますと、間違いなく本作の"灰原愛"の魅力が群を抜いているからでしょう。


灰原愛がコナンと出会ってまだまもないころの作品ということもあって、彼女は自分がどこにも存在しない人間なんだという、いわゆる居場所がないことへの不安を常に感じています。
そんな実存的不安というやつに苛まれている彼女の、存在の儚さと脆さからくる魅力は筆舌に尽くし難いものがありますし、なにより彼女がラストのあのシーン、絶体絶命のあの状況で他人に承認されて居場所を得るというあのラスト!!はたまりませんね。。。

人間の本性が現れるのはピンチの時だという言葉がありますが、裏を返せばピンチの時に出た好意、善意というのは嘘偽りない正直なまるごとの気持ちという可能性が高く、彼女の心に届きうるのはそんな限定されたシチュエーションでしか発揮されない行動だったと。
アクションのカタルシスを十二分に感じさせると同時に、彼女が救われる物語を描くことで私たちの心を抉ってくる。
これ以上ないラストシーンだったんではないでしょうか。。


黒鉄のサブマリンで見せた彼女とコナンの甘々ぶりもいいですが、この頃の関係性の二人もなかなかいいですね。。。
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