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The Pacifist(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

The Pacifist(英題)(1970年製作の映画)
3.0
["愚者や動物みたいな何も考えない者は幸せだ"] 60点

ヤンチョー・ミクローシュ長編九作目。前年に製作した『The Confrontation』の続編としてTV用に製作したイタリア映画。多分唯一の女性単独主人公の作品。原題も英題と同じく"平和主義者"だが、別題として"雨を止めろ"というのもあるらしい。前作では左派を大義の殉教者として描いていたが、本作品では一歩引いて全体を俯瞰しているような形になっている。地元の左派学生のデモを取材していたジャーナリストのバルバラが、ファシストの若者たちに襲撃され、車を破壊され、逮捕されなかった犯人の一人ミケーレに追い回される羽目になるという話。冒頭から集団行動を見せつけてくるのはいつもと変わらないが、長回しを映画の構造に組み込もうと努力はしている模様。それよりも全く口が動いてないタイミングで台詞が入り…と思ったら心の声で画面にいない人(バルバラの場合は母親)と会話していたり、ガチのアテレコだったり…と音の方がキモくて気になった。視覚ではなく音だけ意識の流れを採用してるっぽいが、結局のところ、誰に向けて喋っていても内容は半分くらいしか理解できんので、そこが判然としなくても問題はない。あと、やはりモニカ・ヴィッティが好きすぎるのが画面の端々から伝わってきて、普段使わないズームとか使って顔を超アップにしてたのには流石に驚いた。バルバラはミケーレと突然の恋に落ちて、宗教上の理由から人を殺したくないミケーレの逃亡を助けることになる。終盤でミケーレの殺害命令が下って、バルバラの自宅で淡々とメンバーがミケーレ殺害の準備をしているシーンはヤンチョーらしくない緊張感があって良かった。バルバラは同僚に対して"共産主義者は内ゲバで人殺してばっかだから嫌い"みたいなことを言っていたが、結局ファシストも同じことをしているのだ。そして、ジャーナリストという仕事上傍観者の立場に居た彼女は闘争に巻き込まれていく…と書けば聞こえは良いけど、変化が急激すぎて流石について行けないっすよ。
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