KnightsofOdessa

つつましき詐欺師のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

つつましき詐欺師(1996年製作の映画)
2.5
["最上の人生とは作られたものだ"] 50点

1996年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ジャック・オーディアール長編2作目。ジャン=フランソワ・ドニオーによる同名小説の映画化作品。物語は現在のアルベールやその関係者へのインタビューと当時の再現映像を往来するモキュメンタリー的な構成で展開する。1930年代、英雄小説を読んで英雄に憧れるアルベール少年は、一次大戦で戦死したと言われてきた父親がただの肝硬変で死んだアル中男だったと知り失望する。二次大戦は戦争未亡人の一人息子ということで徴兵を免れ、そこでイヴェットという女性と結婚するが、義実家がレジスタンスの隠れ家で義父が親玉だったことを終戦まで知らされず、怒った彼はそのままパリへと赴く。そこで彼は様々な人間に出会い、自分がレジスタンスの英雄だったという物語を作り始める。新聞のインタビューやレジスタンス同窓会などに参加して情報を集め、まるでロンドンに居たかのような口調で話せば、全員がコロッと騙されてしまう。これはある意味で、マルセル・オフュルスが『哀しみと憐れみ』で指摘していた、ド・ゴールの作り出した"レジスタンス神話"、つまりフランスは全員が一丸となったレジスタンス活動の末に解放されたという言説のパロディのようにも思える。レジスタンスが近くにいることすら知らず、母親はナチスから戦没者年金を貰っていた(コラボ認定されていた)という田舎の青年すら、戦ってフランスを解放したんだという偽の記憶を持ち、なんならそれを誇っている、と。彼に近ければ近い人ほど"彼は子供のようだ"と表現しているが、離れるほどに誇大妄想化していき、ソ連のスパイ説やアフリカ独立の英雄説まで登場していたのは面白かったものの、物語自体はずっと一本調子で、妙なカット割りや無駄な早回しなどで寧ろ青臭さを感じさせていた。
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